クルメツツジにおけるモチツツジおよびキシツツジの遺伝的関与の判別法

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要約

ヤマツツジ節野生種は毛状突起の有無と気孔およびその周囲の表皮細胞の形状に節内変異 をもつ。これらの形質は、園芸品種に対するモチツツジおよびキシツツジの遺伝的関与を 示す指標となる。これを利用して、クルメツツジにモチツツジおよびキシツツジの遺伝的 関与を認めた。

  • キーワード:ヤマツツジ節野生種、毛状突起、気孔、表皮細胞、節内変異、モチツツジ、キシツツジ、クルメツツジ
  • 担当:野菜・茶業試験場久留米支場花き研究室
  • 連絡先:0942-43-8271
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:花き類
  • 分類:研究

背景・ねらい

クルメツツジの成立はヤマツツジ、サタツツジおよびミヤマキリシマの種間交雑に由来するとされる。しかし品種群内の変異をみると、この3種の遺伝的影響からでは説明できない形質もあり、他の野生種からの遺伝子の移入が推定される。そこで、野生種の遺伝的関与を判別できる形質を明らかにし、クルメツツジの新品種育成に資する。

成果の内容・特徴

  • わが国に自生するヤマツツジ節野生種のなかで、モチツツジとキシツツジは葉脈に毛状突起をもつ。(図1)
  • ヤマツツジ節野生種は、気孔およびその周囲の表皮細胞の形状から7型に類別できる。このときケラマツツジ、モチツツジ、キシツツジおよびチョウセンヤマツツジは種固有の特性を示す。(表1)(表2)
  • モチツツジやキシツツジを起源とする園芸品種は毛状突起をもち、気孔およびその周囲の表皮細胞の形状はモチツツジ、あるいはキシツツジと同様である。
  • 毛状突起と気孔およびその周囲の表皮細胞の形状は、モチツツジおよびキシツツジの遺伝的関与を示す形態的指標になる。
  • クルメツツジは、品種群成立の初期からモチツツジおよびキシツツジの遺伝的関与が認められる。(表3)

成果の活用面・留意点

  • クルメツツジ品種に関与した野生種の推定に役立ち、遺伝解析や育種研究に利用できる。
  • 毛状突起はモチツツジでは春葉、夏葉ともにみられるが、キシツツジでは夏葉のみにみられる。

具体的データ

図1.モチツツジの中肋に分布する毛状突起

 

表1.ヤマツツジ節野生種の気孔およびその周囲の表皮細胞の形状に基づく二分式検索表

表2.ヤマツツジ節野生種の気孔およびその周囲の表皮細胞の形状による分類

 

表3.クルメツツジの気孔および表皮細胞の形状と毛状突起の有無別品種数

 

その他

  • 研究課題名:ツツジを主とする収集花木の特性調査
  • 予算区分:バイテク、遺伝資源
  • 研究期間:平成7年度(平成5~10年)
  • 研究担当者:岡本章秀・野中瑞生
  • 発表論文等:
    ①本邦産ヤマツツジ節野生種ツツジ及びクルメツツジの毛状突起、園芸学会九州支部研究集録,第3号,1994.
    ②本邦産ヤマツツジ節野生種及びクルメツツジの葉身背軸面の特性.園学雑,64(別2),1995.