薬剤抵抗性ケナガカブリダニの利用による茶害虫の効果的防除

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要約

ケナガカブリダニの合成ピレスロイド剤抵抗性系統は、合成ピレスロイド剤(以下合ピレ 剤と呼ぶ)散布後の茶園でのカンザワハダニのリサージェンス(異常多発生)を防止する。 この天敵と合ピレ剤の併用により、殺ダニ剤散布量削減と吸汁性茶害虫の効果的防除が可 能になる。

  • キーワード:ケナガカブリダニ、合成ピレスロイド剤抵抗性系統、リサージェンス(異常多発生)、殺ダニ剤散布量削減、吸汁性茶害虫の効果的防除
  • 担当:野菜・茶業試験場茶栽培部虫害研究室
  • 連絡先:0547-45-4101
  • 部会名:野菜・茶業、総合農業(生産環境)
  • 専門:作物虫害、
  • 対象:茶
  • 分類:指導

背景・ねらい

茶園では、合ピレ剤散布によるケナガカブリダニへの悪影響のため、カンザワハダニのリサージェンスが問題になっている。この対策として合ピレ剤抵抗性を示すケナガカブリダニを選抜した。この系統は農薬と天敵の相補的利用を進めるうえで有効な素材である。そこで合ピレ剤散布条件下の茶園で、本系統を活用した茶害虫の防除方法を検証する。

成果の内容・特徴

  • 抵抗性系統は、合ピレ剤に対して高い抵抗性を示す。(表ー1)
  • 鉢植え茶樹、および小規模な茶園では、放飼された抵抗性系統は合ピレ剤散布下でもカンザワハダニの増殖を抑制した。
  • 抵抗性系統が定着した場内試験茶園では、合ピレ剤散布区でもケナガカブリダニの活発な活動が観察され、慣行区と同様カンザワハダニの増加が抑えられた(図ー1)。さらに合ピレ剤散布によりアザミウマ・ヨコバイなど吸汁性害虫は慣行区より低密度に抑えられるので(図ー2)、抵抗性ケナガカブリダニと合ピレ剤の併用により茶害虫が総合的に制御される。

成果の活用面・留意点

  • 抵抗性系統と感受性系統のF1では、その薬剤感受性が抵抗性系統より高まることから、野外でのケナガカブリダニの合ピレ剤抵抗性は、感受性個体との交流により変動しやすいと考えられる。
  • 合ピレ剤抵抗性ケナガカブリダニが分布する茶園では本成果が活用でき、防除体系に合ピレ剤を組み込むことで害虫に対する薬剤選択の幅を拡大することができる。また殺ダニ剤の投入量削減に寄与できる

具体的データ

表1.合ピレ剤抵抗性系統の合ピレ剤permethrin水和剤に対する反応

図1.合ピレ剤抵抗性ケナガカブリダニによる、薬剤散布下でのカンザワハダニの制御

図2.合ピレ剤によるチャノキイロアザミウマ・チャノミドリヒメヨコバイの制御

その他

  • 研究課題名:薬剤抵抗性ケナガカブリダニの利用による茶害虫の効果的防除
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成3~7年)
  • 研究担当者:望月雅俊・河合章
  • 発表論文等:殺虫剤抵抗性カブリダニと薬剤の併用による茶害虫制御.茶研報,79(別冊),66-67,1994.