バイオセンサを用いた茶品質の迅速評価

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要約

バイオセンサを用いることにより、茶浸出液中の遊離アミノ酸、グルタミン酸、タンニン の迅速定量が可能で、これを茶品質の評価に用いることができる。

  • キーワード:バイオセンサ、茶浸出液、遊離アミノ酸、グルタミン酸、タンニン、品質、評価
  • 担当:野菜・茶業試験場茶利用加工部品質化学研究室
  • 連絡先:0547-45-4101
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:品質化学
  • 対象:茶
  • 分類:研究

背景・ねらい

全窒素や遊離アミノ酸などの化学分析値が、茶の品質指標になることが明らかにされてきたが、従来の化学分析法では、茶浸出液の分析に時間と熟練を要する。そこで、化学分析法より簡便・迅速に茶浸出液中の品質成分を定量できる手法として、バイオセンサ法の応用を試みた。

成果の内容・特徴

  • L-アミノ酸オキシダーゼを固定化した膜を酸素電極と組み合わせ、酵素の作用でアミノ酸を酸化する際に消費される酸素をモニタすることにより、茶浸出液中の遊離アミノ酸の濃度を測定するバイオセンサを作製した(図1)。また、グルタミン酸オキシダーゼ固定化膜、あるいはゴボウの組織切片を酸素電極と組み合わせることにより、それぞれ茶浸出液中のグルタミン酸あるいはタンニンの濃度を測定することができた。
  • バイオセンサをフローインジェクション分析に組み込み、パソコンを用いて計測するシステムを開発した(図2)。本装置により、茶浸出液中の遊離アミノ酸及びグルタミン酸の濃度を同時に、試料液注入後2分以内に表示することが可能である。
  • 本バイオセンサで得られる茶浸出液中の遊離アミノ酸の定量値は、従来の化学分析法による遊離アミノ酸の合計量と相関が高く(図3)、本システムは茶の品質評価に用いることができる。また、グルタミン酸の濃度も同時定量可能なので、下級茶の呈味改善のために添加されたグルタミン酸塩の判別にも用いることができる。(図4)

成果の活用面・留意点

  • 茶の製造、流通の各段階で品質評価やグルタミン酸塩の添加のチェックに用いることができる。
  • 酵素膜は失活しやすいため、保存・管理に注意する必要がある。
  • 本法を普及させるには、装置の小型化・廉価化とともに、酵素膜の安定した供給が必要である。

具体的データ

図1.バイオセンサの原理

 

図2.バイオセンサを用いた計測システム

 

図3.センサによる測定値と従来法による測定値の間の相関関係

 

図4.バイオセンサを用いた茶浸出液の分析

 

その他

  • 研究課題名:センサー等を用いた味覚を中心とした茶の品質評価システムの開発
  • 予算区分:官民交流
  • 研究期間:平成7年度(平成3~5年)
  • 研究担当者:堀江秀樹・後藤哲久・向井俊博・木幡勝則
  • 発表論文等:
    ①酵素センサーを用いた茶浸出液中の全アミノ酸濃度の定量.茶研報,75,1992.
    ②酵素センサーを用いた茶浸出液中のアミノ酸のフローインジェクション分析.茶研報,78,1993.
    ③Quality evaluation on green tea. Sensors and Actuators B, 13-14, 1993.
    ④Measurement of tea catechins using biosensors.食工誌, 41(6), 1994.