日周温度によるキクの茎伸長制御における内生ジベレリンの役割
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要約
日周温度によるキクの茎伸長速度の変化は、内生活性型ジベレリン(GA)であるGA1の濃度によって制御される。このGA1の濃度変化は、GAのC-20酸化過程の一部であるGA44→GA19の代謝調節によることが示唆される。
- キーワード:日周温度、キク、茎伸長速度、ジベレリン、GA1濃度、C-20酸化過程、GA44、GA19、代謝調節
- 担当:野菜・茶業試験場 生理生態部 生理機構解析研究室
- 連絡先:059-268-4634
- 部会名:野菜・茶業
- 専門:生理
- 対象:花き類
- 分類:研究
背景・ねらい
日周温度、つまり、昼夜温度較差(DIF)や早朝降温(Morning drop)による茎伸長の制御については、新たな生育調節手段として実用化を目的とした多くの研究がなされている。しかし、その生理的メカニズムは分かっ ていない。本研究では、茎伸長に関与する植物ホルモンであるジベレリン(GA)の動態を調べることにより、日周温度による茎伸長制御の生理的メカニズムを 解明しようとした。
成果の内容・特徴
- キク'秀芳の力'に日周温度処理(低夜温/高昼温、高夜温/早朝降温)を行った結果、茎伸長は、低夜温/高昼温に比較して高夜温/早朝降温で顕著に抑制される(図1)。
- GA生合成阻害剤によって日周温度処理区間の内生GA濃度を揃えた場合、GA3投与による茎伸長量は、処理区間で同じである。したがって、日周温度による茎伸長の制御は、GAに対する茎組織の反応性の変化によるものではないと考えられる。
- '秀芳の力'の茎では、内生GAの生合成経路としてGA53からGA1に至る早期13位水酸化経路、ならびにGA15からGA9に至る早期非水酸化経路が存在する。このうち、早期13位水酸化経路が主体となって機能している(図2)。
- 茎伸長の抑制される高夜温/早朝降温では、低夜温/高昼温に比較して、GA19、GA20、GA1の濃度が顕著に低下する一方、GA44の濃度は増加する(図3)。したがって、高夜温/早朝降温は、図2におけるGA44からGA19への代謝、つまり、C-20酸化の一部を抑制することが示唆される。
- 以上から、日周温度によるキクの茎伸長の制御は、内生活性型GAであるGA1の濃度変化によって起こることが明らかである。このGA1の濃度変化は、GAのC-20酸化過程の一部であるGA44→GA19の代謝調節によることが示唆される。
成果の活用面・留意点
本成果は、日周温度による茎伸長制御の生理的メカニズムの酵素・遺伝子レベルでの解明のための基礎資料として有用である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:野菜・花きの生長における内生ホルモンの役割解明
- 明期および暗期の温度差(DIF)利用による花き類の生育調節
- 予算区分 :経常、(場内プロ)、重点基礎
- 研究期間 :平成8年度(平成元~8年)
- 研究担当者:西島隆明・野中瑞生・腰岡政二・三浦周行・大和陽一・山崎博子
- 発表論文等:日周温度変更処理によるキクの茎伸長制御へのジベレリンの関与.
園学雑,65(別1),1995.