ダイコンの花成および花芽発達の過程におけるジベレリンの役割

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要約

ダイコンの花成および花芽発達の過程のうち、高い内生ジベレリン濃度を必要とするのは主として長日誘導、ならびに花成誘起の初期過程である。また、花成・抽台を抑制するためには、花成誘起以前に内生GA濃度を低下させる必要がある。

  • キーワード:ダイコン、花成、花芽発達、長日誘導、花成誘起
  • 担当:野菜・茶業試験場 生理生態部 生理機構解析研究室
  • 連絡先:059-268-4634
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:生理
  • 対象:根菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

低温要求性植物の花成・抽台にはジベレリン(GA)が関与すると推察されているが、花成および花芽発達のどの段階にGAが関与するかは分かっていない。そ こで本研究では、ダイコンを用い、この点を解明しようとした。さらに、この結果に基づき、ジベレリン生合成阻害剤による不時抽台抑制の効果が不安定である 原因についても検討した。

成果の内容・特徴

ダイコン'耐病総太り'を供試し、花成および花芽発達におけるGAの役割を明らかにした。なお、ダイコンの花成および花芽発達は、低温誘導→長日誘導→花成誘起→花芽分化→花芽発達の順序で進行する。

  • ウニコナゾールによって内生GA濃度を下げると、花成誘起(肥厚期への移行)が遅れる(図1)。
  • 内生GA濃度の低下は、花成誘起以前に起こった場合にのみ花成を抑制し、花成誘起期およびそれ以後では花成を抑制しない(図2)。また、低温誘導後に与えたGA3は、内生GA濃度の低下による花成抑制を打ち消す。
  • 以上から、高い内生GA濃度を必要とするのは、主として長日誘導、ならびに花成誘起の初期過程であると考えられる。また、花成抑制が起こるためには、花成誘起以前にGA濃度が低下する必要がある。
  • 春まき栽培で、内生GA濃度の低下が花成・抽台に及ぼす影響を検討した結果、ウニコナゾール処理時に花成誘起に達していた個体が多い場合には、花成・抽台遅延の程度が小さい(図3)。したがって、従来の研究でGA生合成阻害剤による不時抽台の抑制効果が不安定であった原因は、処理が花成誘起の時期以降に行われたためと考えられる。

成果の活用面・留意点

本成果は、低温要求性植物の花成におけるGAの役割解明のための基礎資料として有用である。また、不時抽台を内生GA濃度の制御によって抑制するための方法論を提供する。

具体的データ

図1 ウニコナゾール土壌灌注処理が花成および花芽発達に及ぼす影響

図2 ウニコナゾール土壌灌注処理時間が開花に及ぼす影響

図3 ウニコナゾール茎葉散布処理が抽台日に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:野菜の花成調節機構の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成元~9年)
  • 研究担当者:西島隆明・三浦周行・大和陽一・山崎博子
  • 発表論文等:ダイコンの抽台・花成に関する研究(第7報)花成においてジベレ
    リンを必要とする素過程. 園学雑,64(別1),1994.