キャベツ害虫コナガの有用な捕食性天敵3種

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要約

ウヅキコモリグモ、オオアトボシアオゴミムシおよびキボシアオゴミムシはコナガ幼虫の捕食量が多く、植物に登る性質があり、さらにキャベツほ場での密度も比較的高いことから、コナガに有用な捕食性天敵である。

  • キーワード:ウヅキコモリグモ、オオアトボシアオゴミムシ、キボシアオゴミムシ、コナガ、捕食量、キャベツ、天敵
  • 担当:野菜・茶業試験場 環境部 虫害研究室・上席研究官、(虫害第1研究室)
  • 連絡先:059-268-4643
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:作物虫害
  • 対象:昆虫類
  • 分類:研究

背景・ねらい

キャベツ害虫のコナガは、多くの薬剤に対して抵抗性を獲得し防除が困難であるため、本種の寄生性天敵(寄生蜂)を用いた防除試験が行われてきている。しか し、捕食性天敵(ゴミムシ・クモなど)についてはこれまで研究例が少ないので、コナガの天敵として有用な捕食性天敵の種を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • キャベツ苗を植えた小規模な模擬ほ場(33×48cmの育苗箱にキャベツ苗8株を移植し、コナガ2齢幼虫を40頭接種)にオオアトボシアオゴミムシ(Chlaenius micans)あるいはキボシアオゴミムシ(C. posticalis)の成虫を8頭放飼すると、両種ともコナガの幼虫を4日間で90%以上捕食する(図1)。セアカヒラタゴミムシとキンナガゴミムシも同様な捕食量を示すが、ほ場内個体数は少なく幼虫は植物に登らない。
  • オオアトボシアオゴミムシとキボシアオゴミムシの幼虫は、蛹化までにコナガ4齢幼虫をそれぞれ約190頭、及び約90頭捕食する。(表1)
  • ウヅキコモリグモ(Pardosa astrigera)雄成虫(8頭)のコナガ幼虫捕食量は、コナガの幼虫密度の増加に対してS字型に増加する。このことから、株当たり5~6頭( 図2 の接種頭数40~50)までの幼虫密度に対しては、コナガ個体群を密度依存的に制御する。
  • キャベツほ場に2×2mのアクリル製の枠を設置し、その中にウヅキコモリグモを100頭放飼すると、収穫期までコナガ幼虫の密度を約1/2に抑える。(図3)しかし、この効果には年次変動が見られる。

成果の活用面・留意点

  • 環境保全型の害虫防除対策を講ずる際に有用な情報となる。
  • 2種のゴミムシの成虫が有効に働くのは、6月下旬~7月下旬と8月中旬~9月下旬の年2回である。幼虫は7月上旬から下旬までの約1か月間だけ発生する。
  • ウヅキコモリグモのほ場内の密度は、ほ場周囲の生息密度に左右される。

具体的データ

図1 ゴミムシ成虫の放飼いに伴う模擬ほ場内のコナガ葉中の死亡率

表1 ゴミムシ幼虫各齢期当たりのコナガ4齢幼虫補食量

図2 コナガ幼虫の密度とウヅキコモリグモ雄成虫の補食能力との関係

図3 ウヅキコモリグモのコナガ個体群制御効果

その他

  • 研究課題名:シミュレ-ションによるコナガ個体群の制御技術の評価
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成4~8年)
  • 研究担当者:末永 博・浜村徹三
  • 発表論文等:第39回(1995)および40回(1996)日本応用動物昆虫学会講演発表.