ジュース向き加工用トマトの新品種'さきこま'

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要約

'さきこま'は多収で、ジョイントレス果柄を持つため省力収穫が可能で萎ちょう病(レース1・2)、半身萎ちょう病に抵抗性を有するジュース向き加工用トマト品種である。

  • キーワード:'さきこま'、省力収穫、萎ちょう病(レース1・2)、半身萎ちょう病 、加工用トマト
  • 担当:野菜・茶業試験場 野菜育種部 夏秋野菜育種研究室
  • 連絡先:019-643-3414
  • 部会名:野菜・茶業
  • 専門:育種
  • 対象:果菜類
  • 分類:普及

背景・ねらい

わが国の加工用トマトの生産コスト低減のため、野菜・茶業試験場では先に一斉収穫向き加工用トマト'なつのこま'を育成したが、固定種であるため収量性が十分でなく、果実が小さく晩生であることなどから、十分な普及には至っていない。そこで、多収で収穫の省力化が図れ、ジュース用原料としての品質を備え た実用性の高い品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 育成経過 1989年から、野菜・茶業試験場でこれまでに育成した系統及び導入品種・系統の中から選定された30数点の素材を用いて約940組合せのF1を作出し、1991年から検定を開始した。その結果、アメリカから導入した大果系の'Horizon'を種子親に、当支場育成の'MTP20'(旧系統名: 盛岡20号)を花粉親にした組合せが育種目標をほぼ満たしていたので'盛岡交27号'の系統名を付し、1993年から特性検定試験ならびに系統適応性検定 試験に供試した。その結果、ジュース加工用品種として有望であると評価され、1996年8月、とまと農林交26号'さきこま'として命名登録された。
  • 特性の概要 'さきこま'の草姿は心止まり型で節間は短く、開張度は'カゴメ77'より小さい。'カゴメ77'よりやや晩生であるが、極めて安定した多収性を示し、 ジョイントレス果柄を持つため、一挙収穫はもとより手取りでも収穫の省力化が図れる。果実は'カゴメ77'と同程度(90g)の大きさで、球形であり、糖 度はわずかに低いものの、硬さ、色調、酸度、果汁pHなどはほぼ同程度で、ゼリー率も比較的高く、ジュース加工適性は良い。萎ちょう病(レース1・2)、 半身萎ちょう病に対してはともに抵抗性である (表1 、表2 、表3 、表4) 。

成果の活用面・留意点

  • 加工用原料で、露地無支柱栽培に適し、一斉(機械)収穫もしくは2~3回の収穫方式に適応する。適応地域は北海道、東北、北陸、関東、中部、山陰地方である。
  • 一挙収穫の適期は'NDM051'よりやや遅いが、適期幅は約2週間で比較的広い。一斉収穫前に一度、手取り収穫を併用すると腐敗果が減少し、収量増につながる。

具体的データ

表1 'さきこま'の植物体特性と収量特性

表2 'さきこま'の果実特性

表3 一挙収穫における'さきこま'の収量特性

表4 'さきこま'の病害抵抗性

その他

  • 研究課題名:高品質・低コスト生産適性品種・系統の選定
  • 予算区分 :緊急技術開発
  • 研究期間 :平成8年度(平成2~5年)
  • 研究担当者:石内傳冶・藤野雅丈・矢ノ口幸夫
  • 発表論文等:なし