茶園の干ばつ被害軽減に必要な根域の深さ

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要約

1994年と95年の干ばつによる茶樹の被害と土層の深さとの関係を調査し、赤黄色土の茶園では根域の深さが50~60cm以上あれば被害が軽微であることを見出し、従来からの茶園改善基準値「主要根群域の厚さ60cm以上」の妥当性が裏付けられた。

  • キーワード:干ばつ、茶樹、根域 1
  • 担当:野菜・茶業試験場 茶栽培部 生理遺伝研究室
  • 連絡先:0547ー45ー4101
  • 部会名:野菜・茶業、総合農業(生産環境)
  • 専門:栽培
  • 対象:茶
  • 分類:指導

背景・ねらい

茶樹は深根性作物で干ばつに強いとされているが、1993年の多雨・寡照に続く1994・95年の異常高温・少雨によって、葉焼け・枝枯れ等干ばつ被害 症状が全国各地の茶園に発生するとともに、翌年春の生産量も大幅に減少した。そこで、干ばつ被害程度と茶園の土層深度との関連性を検討し、異常気象に強く 安定した生産が可能な茶園の条件を検討する。

成果の内容・特徴

  • 試坑による根系分布調査から、茶樹の白色細根は貫入式土壌硬度計(大起理化DIk-5520、 2cm2コーン)の最大貫入深度(抵抗25kg/cm2)から、10~15cm程度深い位置まで分布することがわかり、最大貫入深度は、根系到達深度のおおまかな目安となる。
  • 静岡県下造成地茶園内で、干ばつ被害指標として葉層の量、葉のサイズと最大貫入深度の関係を調べ、最大貫入深度が深い場合は被害が軽微であることを確認した(図1、図2)。
  • 貫入深度40~50cm以上で被害軽微となり、茶園で干ばつ被害を回避するために必要な根域の深さは50~60cmと推定され、茶園改善基準値(根群域60cm以上)とほぼ一致する。
  • 岐阜、滋賀、三重の赤黄色土茶園について干ばつ被害程度と最大貫入深度との関連を調査し(図 3)、他に重要な因子がない場合には上述の値が概ね妥当と判断される。

成果の活用面・留意点

  • 適用範囲は、赤黄色土の茶園に限られ、礫や砂が多い場合も適用できない。火山灰土壌は下層まで膨軟な場合が多く、干ばつ発生様相が赤黄色土と異なるため適用困難である。
  • 土層深度が十分でも、粘質な不透水層が浅層にある場合や不適切な施肥管理(著しい多肥など)、高いpHの頁岩由来土壌など、根群の発育阻害要因がある場合は適用できない。
  • 土壌硬度計の調査点数は、土層の均一さにもよるが5点/10a以上は必要と見られる。

具体的データ

図1 越冬葉の葉量と貫入深度との関係

図2 貫入式土壌硬度計の最大貫入深度

図3 各地茶園の土壌硬度計測定記録

その他

  • 研究課題名:1)果樹・茶等永年生作物の乾燥・異常高温による被害状況の解析に関する緊
  • 急調査研究.2)干ばつ被害茶樹の生育実態調査
  • 予算区分 :1)緊急調査費.2)経常
  • 研究期間 :1)平成6年度 2)平成7年度
  • 研究担当者:松尾喜義・岡野邦夫
  • 発表論文等:干ばつ被害発生茶園における土壌貫入抵抗の特徴.茶研報,84,96ー97,1996.