淡色黒ボク土における地下水位制御がタマネギの生育に及ぼす影響

要約

淡色黒ボク土における秋まきタマネギ栽培で地下水位を-30cmまたは-40cmで制御すると、平年降水量25%相当の地表灌水条件下であっても、地下水位を制御せず平年降水量相当を地表灌水する場合と同等の球重が確保できる。

  • キーワード:タマネギ、地下水位制御システム、地下灌漑、根系分布
  • 担当:業務需要畑野菜作・夏秋期野菜生産
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜生産技術研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

タマネギにおいても、加工業務用需要も含め国産品の周年安定供給が求められており、本州以南における水田転換畑での生産拡大が求められている。
一方、水田の高度利用を目的として地下水位制御システム(FOEAS)の設置が推進されており、タマネギの導入が試みられている。その際、FOEASの排水機能だけではなく、地下灌漑機能を活用した干ばつ時における増収・安定生産が期待される。そのためには、地下水位制御がタマネギの生育に及ぼす影響を知る必要があるが、露天圃場では降雨による影響が大きく、地下水位制御の効果を評価できない。そこで、ガラス室内でFOEASを想定した地下水位制御試験を行い、少雨条件下での設定水位の高低が地上部および根系の発育に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 淡色黒ボク土を充填したガラス室内の栽培槽において、平年降水量(気象庁アメダスデータ:茨城県つくば市舘野)を基準とした地表灌水を行った。地下水位制御区は少雨年を想定して、平年降水量の25%相当を地表に灌水し、地下水位を-30cmまたは-40cmに設定した。対照区は平年降水量相当の地表灌水を行い、地下水位制御は行わず、さらに栽培槽内に停滞しないよう排水を行った。その結果、タマネギ栽培時の表層0~10cmの土壌の体積含水率は地下水位制御区で対照区よりも高く推移し、地下水位設定が高いほど高く保たれる(図1)。
  • 地下水位制御の有無や設定水位にかかわらず、2月中旬以降は垂直方向への根の伸長はみられない(図2)。また、根の到達深さおよび根長のいずれも、対照区>水位-40cm区>水位-30cm区となる。
  • 収穫時の葉新鮮重は対照区>水位-40cm区>水位-30cm区であるが、球新鮮重にほとんど差はない(表1)。すなわち、少雨年相当の地表灌水条件下でも、設定水位-40cmの維持により、対照区と同等の球重が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 上記は、2010年11月17日~2011年6月1日に茨城県つくば市のガラス室内で、茨城県つくば市池ノ台の淡色黒ボク土を充填した栽培槽(ステンレス枠:縦1m、横1m、深さ1m)において栽培したタマネギ品種「もみじ3号」での結果である。
  • 降水量などの気象条件や土壌の種類によって適正な地下水位は異なる。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:業務・加工用野菜の安定供給に向けた夏秋期生産技術の開発
  • 中課題番号:113a3
  • 予算区分:委託プロ(水田底力)、交付金
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:中野有加、岡田邦彦
  • 発表論文等:中野、岡田(2012)根の研究、21:63-71