アスパラガス連作圃場の継続的高土壌水分状態と株の生育不良が相関する

要約

アスパラガスの連作露地圃場において、降雨後に土壌が乾きにくく、テンシオメーターによるモニタリングで圃場容水量以上に湿潤状態が継続するところでは、アスパラガスの生育が悪く立枯れ症状などの被害が生じる。

  • キーワード:テンシオメーター、露地、降雨、アスパラガス、立枯れ症状、先行降雨指数
  • 担当:業務需要畑野菜作・野菜周年安定生産
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜生産技術研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

アスパラガスはコメの生産調整政策に対応した水田転換作物のひとつとして有望である。アスパラガスの原産地は地中海沿岸からカスピ海沿岸とされ、耐乾性に優れる一方で地下水位が高い排水不良地では生育が劣るとされているが、実証した報告はない。そこで、アスパラガス連作露地圃場での土壌の水分状態と株の生育との関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • アスパラガス栽培圃場にテンシオメーターを設置して(図1)土壌水分張力を記録すると(図2)、アスパラガスの生育に特に問題がみられなかった箇所(図1の15-20)では、強い降雨後2週間が経過すると、先行降雨指数(前日までの降雨挙動を考慮して土壌の乾湿度を表す指標)が減衰し、順調に排水・乾燥が進んで-42 kPa以下(pF 2.6相当以上)となる。一方、アスパラガスの生育に問題が生じた箇所では、圃場容水量もしくはそれ以上に湿潤な状態(-4.5~-16.5kPa; pF 1.2~1.9相当)が継続する(図3)。
  • 時系列土壌水分張力データについて主成分分析を行うと、寄与率が65.3%となる第一主成分の負・正がそれぞれ、降雨後の乾燥の進行具合の良好・不良に対応し、この第一主成分とアスパラガスの最大草丈との間に有意な負の相関(r = -0.782、 P < 0.001)が、立枯れ症状である地上部被害指数との間に有意な正の相関(r = 0.762、 P < 0.001)が認められる(図4)。
  • 根株の重量は、草丈の低い畝では小さく、草丈の高い畝では大きい。地上部草丈と地下部被害指数および根株重には対応関係があることから(データ省略)、降雨後に土壌が乾きにくい箇所では根腐れによる立枯れが生じて生育不良に陥ると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本研究は福島県農業総合センター会津地域研究所内の前年にもアスパラガスを栽培した区画(土壌粒径組成;砂57~67%、粘土1.9~2.6%、シルト31~40%)で行ったものである。テンシオメーターは畝上面から15cm深に設置する。
  • 茎葉の黄化・立枯れ症状を示した生育不良株は、根腐れの症状も呈し、一部の株では茎や根の維管束の褐変が観察されたこと、ならびに生育不良株から立枯病菌および株腐病菌と考えられる糸状菌が分離されたことから、立枯病および株腐病が発生していたと推察される。
  • 先行降雨指数(API)は、Hirota & Fukumoto (2009) Journal of Agricultural Meteorology 65, 375-386を参考にアメダスなどの気象観測データを用いて計算する: APIj = Kj (APIj-1+Prj)、ここでPrjはj日目の日降水量(mm)、Kjはj日目の減衰係数で Kj = exp (-Epj/Wm)、ここでEpjはj日目の日蒸発量(mm)、Wmは蒸発に関与する土の厚さ(本研究では10mm)を表す。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:葉根菜の加工・業務需要に対応できる周年安定生産システムの開発
  • 中課題番号:113a4
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:柳井洋介、芳賀紀之(福島県農業総合センター会津地域研究所)、浦上敦子
  • 発表論文等:柳井ら(2013)園芸学研究、12(1)、75-82