ネギの低辛味性を選抜可能なSSRマーカー

要約

ネギ系統「T03」が有する低辛味性QTLは連鎖群Chr.2a上に存在し、ほぼ一年を通じて作用する。QTL上に位置するSSRマーカーAFAT04B03は、低辛味性根深ネギ系統を育成する上で有用な選抜マーカーである。

  • キーワード:ネギ、辛味、ピルビン酸、SSRマーカー
  • 担当:業務需要畑野菜作・露地野菜品種開発
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ネギの辛味に関しては、官能試験では多検体を扱えない上、辛味成分である含硫化合物(チオスルフィネート類)を直接定量することは困難である。辛味成分の生成過程で同時に生成されるピルビン酸量を測定する手法は、ネギ育種における選抜に利用できるが、特定の時期に多検体を分析する必要があるため、低辛味ネギ系統の育成を効率的に進めるためには辛味に関する選抜マーカーが有用である。そこで、ネギ品種育成において利用可能な低辛味性選抜マーカーを開発する。

成果の内容・特徴

  • 短葉性ネギ品種「ふゆわらべ」の育成過程で選抜された系統「T03(低辛味)」と、一般の根深ネギ系統「Sa03」とのF3系統群を用いた冬~春どり栽培におけるQTL解析から、T03が有する主要な低辛味性QTLは、連鎖群Chr.2a上のSSRマーカーAFRA14A05(131.9cM)からAFA14A05(166.1cM)までの24.2cMの領域に存在することが明らかである(図1)。
  • 野菜茶研育成の36系統を用いた冬どり栽培において、QTL領域上のAFAT04B03座がT03アリルホモ型(以下T03ホモ型)の個体は、根深ネギ系統Sa03アリルホモ型(以下Sa03ホモ型)の個体よりも葉鞘部のピルビン酸生成量が有意に低くなる(表1)。
  • 短葉性試交F1を用いた春~秋どりの作型において、T03ホモ型の個体は、ヘテロ型ならびにSa03ホモ型の個体よりも葉鞘部のピルビン酸生成量が低くなる(表2)。このことから、本QTLはほぼ1年を通じて効果があるといえる。
  • QTL領域上のSSRマーカーAFAT04B03座では、T03アリルは、「ふゆわらべ」ならびに加賀群に属する一部の品種のみで検出され、一般の根深ネギ品種である千住群市販品種では認められない(表3)。このため本SSRマーカーは、「ふゆわらべ」等を素材とした根深ネギ育成における低辛味性選抜マーカーとして利用できる。

成果の活用面・留意点

  • AFAT04B03ならびに近傍マーカーのプライマー配列等は、VegMarksやDDBJで公開している。
  • 低辛味性QTLを確実に導入するには、QTL領域を挟む複数のマーカーを利用する。
  • 低辛味を育種目標としたF1品種育成においては、両親系統に低辛味性QTLをホモに付与することが望ましい。

具体的データ

図1,表1~2

その他

  • 中課題名:露地野菜の高品質・安定供給に向けた品種・系統の育成
  • 中課題番号:113b0
  • 予算区分:交付金プロ(園芸マーカー)、交付金
  • 研究期間:2007~2011年度
  • 研究担当者:塚崎光、谷口成紀(JSPS特別研究員)、山下謙一郎、執行正義(山口大)、小島昭夫、若生忠幸
  • 発表論文等:Tsukazaki H. et al. (2012) Mol. Breed. 30:1689-1698