「メロン中間母本農4号」の短側枝性を選抜できるDNAマーカー

要約

「メロン中間母本農4号」の持つ短側枝性主働遺伝子(slb)は第XI連鎖群に座乗する。近傍のSSRマーカーCMGA104を用いることにより、同中間母本由来の短側枝性をもつ個体を効率的に選抜できる。

  • キーワード:メロン、短側枝性主働遺伝子(slb)、QTL解析、選抜マーカー
  • 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

わが国におけるメロンの栽培では、果実品質や作業性の向上ならびに病虫害発生防止の目的で、側枝の摘除等の整枝作業に多大な時間と労力を費やしている。「メロン中間母本農4号」(以下「農4号」)の持つ短側枝性は、整枝作業の大幅な省力化に寄与する有用形質であるが、短側枝性は幼苗期に選抜ができないため表現型による選抜には長期間を要する。そこで、短側枝性に寄与する主働遺伝子(slb)の座乗位置を明らかにし、短側枝性を持つ個体を幼苗期に選抜可能なマーカーを開発する。

成果の内容・特徴

  • 短側枝性の「農4号」と側枝が普通に伸長するメロン品種「アールスフェボリット春系3号」(以下「春系3号」)との交雑F2集団における主枝の第11~15節に発生した側枝長の平均値(平均側枝長)に関する効果の大きいQTLは、第XI連鎖群に検出される(表1)。このQTLは「農4号」に由来しており、「農4号」の持つ短側枝性主働遺伝子(slb)座に相当する。
  • 「農4号」の兄弟系統由来であり slbをホモに持つ短側枝性メロン系統「AnSB-4」と「春系3号」との交雑F2集団を、第XI連鎖群のQTL近傍のマーカーCMGA104の遺伝子型で分類した場合の平均側枝長は、「農4号」ホモ型の個体では、ヘテロ型個体および「春系3号」ホモ型の個体と比較して有意に短い(図1)。そのため、「農4号」に由来する交雑集団の中から「農4号」型のマーカー遺伝子型の個体を選抜することにより、短側枝性の個体を選ぶことができる。

成果の活用面・留意点

  • マーカーCMGA104はDanin-Polegら(2001, Theor. Appl. Genet. 102:61-72)により報告されているものであり、プライマーの塩基配列情報は以下の通りである。
    F: TTACTGGGTTTTGCCGATTT、R: AATTCCGTATTCAACTCTCC
  • マーカーCMGA104によって増幅される断片長は、「農4号」が約130bpであり、「春系3号」はそれより15bp短い。
  • 「メロン中間母本農4号」(第10977号)は2003年2月20日に品種登録され、「AnSB-4」(第25783号)およびこれを種子親とした短側枝性・雌雄同株型F1品種「フェーリア」(第25784号)は2011年7月26日に品種登録出願公表されている。
  • 「メロン中間母本農4号」の持つ短側枝性遺伝子(slb)については、小原ら(2001, 野菜茶試研究報告 16:69-78)により詳細に報告されている。

具体的データ

表1,図1

その他

  • 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
  • 中課題番号:141f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2007~2012年度
  • 研究担当者:吹野伸子、小原隆由、杉山充啓、久保中央(京都府大)、平井正志(京都府大)、坂田好輝、松元哲
  • 発表論文等:Fukino N. et al. (2012) Euphytica 187:133-143 (DOI 10.1007/s10681-012-0667-3)