チャノミドリヒメヨコバイに抵抗性を有するチャ遺伝資源系統

要約

チャノミドリヒメヨコバイに抵抗性を持つチャ品種育成を目的に遺伝資源から選抜した3系統は、感受性の普及品種「やぶきた」に比べて耐性が高く、新芽の食害痕数も少ないことから、育種素材として有望である。

  • キーワード:チャノミドリヒメヨコバイ、育種素材、耐性、抗寄生性
  • 担当:果樹・茶・茶
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

チャノミドリヒメヨコバイ(図1)は,年間6回以上も発生して茶の新芽を食害する。その防除に要する経費と労力は、生産現場において問題となっている。枕崎茶業研究拠点には海外から導入したチャ遺伝資源保存園があるが、その中に達観調査で本虫の食害による葉の黄褐変や萎縮の程度が小さい系統(枕Cd19,枕Cd289とCA278)が保存されている。そこで本虫に抵抗性を持つチャ品種育成を目的として、これら3系統と比較品種「やぶきた」で耐性および抗寄生性の指標としての食害痕数を比較する室内実験を行い、育種素材として有望か否かを評価する。

成果の内容・特徴

  • 室内実験容器(図2)を用いることにより、水挿しした新芽に累代飼育した本虫を放飼して食害させ、食害被害の比較から耐性を評価できる。室内実験の結果、3系統は、「やぶきた」よりも食害被害程度が小さいことから耐性がある(表1)。
  • 自然条件下における本虫の主な食害部位は、第一位葉である。圃場で採取した新芽の第一位葉の食害痕数を比較すると、3系統は「やぶきた」よりも少ない(表2)。
  • 室内実験容器(図2)を用いて、食害させた後に各品種・系統の食害痕数の比較から抗寄生性を評価できる。室内実験の結果は、圃場における食害状況をよく反映し、3系統の食害痕数は「やぶきた」に比べて顕著に少ない(表2)。3系統は、餌資源としての利用がほとんど無く抗寄生性がある。

成果の活用面・留意点

  • 食害耐性や自然条件下における食害痕数の比較には、三番茶や秋芽時期の新芽を供試した。この時期は,チャノミドリヒメヨコバイの発生時期であり、成幼虫がチャ新芽を食害している。
  • 枕Cd19と枕Cd289はインドから導入した系統で、CA278は中国から導入した鹿Ch2とインドから導入したAi57を交配した系統である。
  • 3系統は、チャノミドリヒメヨコバイに抵抗性を持つチャ品種を育成のための育種素材として用いる。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:多様なニーズに対応する安定多収な茶品種の育成と安定生産技術の開発
  • 中課題番号:142f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:萬屋宏
  • 発表論文等:萬屋ら(2012)九州病害虫研究会報、58:93-99