スワルスキーカブリダニを土着カブリダニ種から識別する方法
要約
スワルスキーカブリダニは、ラデマッヘルカブリダニとミチノクカブリダニに近似するが、胴背毛のZ4とZ5の長さを比較することによりミチノクカブリダニから識別され、胴背毛のj3の長さを比較することによりラデマッヘルカブリダニから識別される。
- キーワード:導入種、土着種、カブリダニ製剤、簡易識別
- 担当:環境保全型防除・天敵利用型害虫制御
- 代表連絡先:電話 050-3533-3861
- 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
施設野菜では天敵であるスワルスキーカブリダニ製剤を活用したIPM体系の構築が進んでいるが、製剤の効果を判定するためには、スワルスキーカブリダニを土着種から識別して計数する必要がある。しかし、土着種を識別するために整備された検索表(江原・後藤、2009)では、スワルスキーカブリダニを識別することはできない。そこで、スワルスキーカブリダニの形態近似種を抽出して形態形質を比較し、比較的簡易に識別する方法を確立する。
成果の内容・特徴
- スワルスキーカブリダニの外部形態は、土着種のラデマッヘルカブリダニとミチノクカブリダニに近似するが、胴背毛のj3、Z4、Z5で識別される(図1)。
- スワルスキーカブリダニの胴背毛のZ4はZ5の半分よりも長く、Z4がZ5の半分よりも短いミチノクカブリダニから識別される(図2)。
- スワルスキーカブリダニの胴背毛のj3の長さは、j3の毛穴とj4の毛穴の間の距離よりも長く、j3がj3とj4の毛穴間隔よりも短いラデマッヘルカブリダニとミチノクカブリダニから識別される(図3)。
成果の活用面・留意点
- 識別するためには、プレパラート標本を作製し、位相差顕微鏡または微分干渉顕微鏡で観察する。
- 本識別法を実践する前に、簡易識別マニュアルで主要種の識別に慣れることが望ましい。
- 検索表(江原・後藤、2009)を利用すると、スワルスキーカブリダニはラデマッヘルカブリダニに誤判定される可能性がある。
- ラデマッヘルカブリダニとミチノクカブリダニは果菜類栽培施設で発生することが多いので、このような施設でスワルスキーカブリダニ製剤の効果を判定するためには、識別が不可欠である。
- 近隣でスワルスキーカブリダニを利用する施設がある圃場で土着カブリダニを調査する場合には、識別が必要である。
具体的データ
その他
- 中課題名:土着天敵等を利用した難防除害虫の安定制御技術の構築
- 中課題番号:152b0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011?2012年度
- 研究担当者:豊島真吾、天野 洋(京都大学大学院農学研究科)
- 発表論文等:
1) 豊島(2012)植物防疫、66(10):1-4
2) 豊島、天野(2012)応動昆、56(4):176-179