籾殻くん炭覆土による有機質液肥を施用したレタスセル苗の生育促進技術

要約

有機質液肥であるコーンスティープリカーを追肥したレタスのセル育苗で、籾殻くん炭を使って覆土すると、培地中の硝酸態窒素が増加する。この効果により、苗の窒素吸収や生育が促進され、定植後の株の生育と結球重が増加する。

  • キーワード:籾殻くん炭、コーンスティープリカー、セル苗、窒素肥効、硝酸態窒素
  • 担当:環境保全型農業システム・有機農業体系
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜生産技術研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

有機質液肥を用いたセル育苗では、培地が保持できる養分量が少ないことに加え、有機質液肥の窒素肥効が化学肥料に比べて緩慢なことから、苗の生育が窒素不足により遅延しやすい問題がある。そこで、有機質液肥としてコーンステープリカー(CSL)を追肥したレタスのセル育苗において、籾殻くん炭を活用して有機質液肥の窒素肥効および苗の生育を促進させる方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 播種をせず苗による窒素吸収がない状態でCSLを試験開始後3週間目から6日おきに追肥する条件において、籾殻くん炭を培地に覆土すると、覆土量と同じ量の籾殻くん炭を培養土に混和した培地や無覆土の培地に比べ、灌水時に培地から流出する水や培養土に含まれる硝酸態窒素が増加する(図1)。
  • CSLを播種後3週間目から6日おきに追肥するレタスのセル育苗では、籾殻くん炭の覆土によって、苗の窒素吸収や生育が促進される(図2、図3)。
  • 覆土する籾殻くん炭の量は1トレイあたり23g~90gで、この範囲内では苗の生育や窒素吸収量に大きな差はない(データ省略)。
  • 籾殻くん炭を覆土した苗は、レタスのセル育苗で慣行的なバーミキュライト覆土や無覆土の苗に比べて、移植後の初期生育が速く、春どり作型での栽培では収穫時の結球重が多い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 化学肥料を使わないレタス栽培における良苗の安定供給技術として活用できる。
  • 気温が高い時期の育苗では、籾殻くん炭を覆土した培地表面が高温になり、発芽やその後の苗の生育に障害を及ぼす可能性があるので、注意が必要である。
  • CSLの窒素肥効は光条件の影響を受け、培地面を暗くすると促進される。このため、くん炭覆土による苗の生育促進は、培地面の遮光効果によってもたらされている可能性がある。

具体的データ

図1~3,表1

その他

  • 中課題名:有機農業の成立条件の科学的解明と栽培技術の体系化
  • 中課題番号:153b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011年~2012年度
  • 研究担当者:佐藤文生、窪田昌春、畔上耕児
  • 発表論文等:
    佐藤ら(2010)園学研9:421-426
    佐藤ら(2012)日土肥誌83:274-279