キュウリべと病抵抗性を支配するQTLの同定

要約

べと病高度抵抗性キュウリ系統CS-PMR1および中程度抵抗性品種「山東」が有するべと病抵抗性には、少なくともそれぞれ8個および3個のQTLが関与する。うち8個のQTLは同一集団で既に報告したうどんこ病抵抗性QTLと近い位置にある。

  • キーワード:キュウリ、べと病抵抗性、QTL解析、組換え型自殖系統
  • 担当:日本型施設園芸・果菜類品種開発
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・野菜育種・ゲノム研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

キュウリべと病は卵菌類に属する絶対寄生菌Pseudoperonospora cubensisにより引き起こされる。多湿条件下で発生し、生育の遅れ、収量減少および品質低下を引き起こす病害であり、世界各地で発生している。現行のべと病抵抗性品種の抵抗性程度は十分ではなく、高度抵抗性品種の育成が求められている。うどんこ病高度抵抗性キュウリ系統CS-PMR1はべと病に対しても高度抵抗性を示すが、本系統が有するべと病抵抗性の遺伝様式は未解明である。そこで、CS-PMR1および中程度抵抗性品種「山東」との交配由来の組換え型自殖系統を用いてべと病抵抗性のQTLを同定する。

成果の内容・特徴

  • べと病高度抵抗性キュウリ系統CS-PMR1と中程度抵抗性品種「山東」との交配に由来する組換え型自殖系統111系統を供試して、6種類のベと病抵抗性検定(第1本葉を用いたリーフディスク検定、2つのステージの子葉および第1本葉を用いた切離葉検定、春および秋のハウス栽培時の接種検定)で得られた結果をもとにQTL解析を行うと、CS-PMR1および「山東」由来のべと病抵抗性に関与するQTLがそれぞれ8個および3個検出される(図1)。
  • 検出されたQTLのうち8個(dm1.2dm1.3dm3.1dm4.1dm5.1dm5.2dm5.3dm6.1)は、同一集団を用いて得られたうどんこ病抵抗性QTL(野菜茶業研究所2013年度研究成果情報「キュウリうどんこ病抵抗性を制御するQTLの同定」)と近い位置に検出される(図1)。
  • 検出された11個のQTLのうち、1個のQTLについてのみ分離する7集団(QTLのマーカー遺伝子型が1個のみヘテロであり他はすべてホモである組換え型自殖系統の自殖次代)を供試して5個のQTL周辺のマーカー遺伝子型と抵抗性程度との関係を調査した場合、マーカー遺伝子型が抵抗性親ホモの個体は罹病性親ホモの個体より病斑面積または分生子量の値が小さく、高い抵抗性を示す(表1)。

成果の活用面・留意点

  • べと病の接種検定には野菜茶業研究所のハウス内で自然発病したキュウリ葉より単胞子分離してキュウリ品種「加賀青長節成」の葉で継代・維持している菌株を用いた。
  • CS-PMR1(JP番号225994)の種子は農業生物資源ジーンバンクから入手できる。
  • CS-PMR1のべと病抵抗性には少なくとも8個のQTLが関与しているため、高度抵抗性育種のためには複数の抵抗性QTLを併せ持たせる必要がある。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:果菜類の高品質化・生産性向上に資する品種・系統の育成
  • 中課題整理番号:141f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2007~2014年度
  • 研究担当者:吉岡洋輔、杉山充啓、坂田好輝、吹野伸子
  • 発表論文等:Yoshioka Y. et al. (2014) Euphytica 198:265-276