緑茶製造の蒸熱時における茶葉中ペクチンの低分子化

要約

緑茶製造の蒸熱時に、蒸熱時間の増加に伴い、水不溶性ペクチンがβ脱離による分解を受けて水溶性ペクチンとなることで、茶葉中の水溶性ペクチン含量が増加する。このとき、水溶性ペクチンの低分子化も進む。

  • キーワード:茶、製茶、蒸熱、ペクチン
  • 担当:果樹・茶・茶
  • 代表連絡先:電話 050-3533-3861
  • 研究所名:野菜茶業研究所・茶業研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

茶葉浸出液中の水溶性ペクチンは、茶の渋味を低減する効果のあることが明らかにされ、緑茶の品質にとって重要な役割を果たしていると考えられる。これまでに、水溶性ペクチンは、荒茶製造の蒸熱工程においてのみ、蒸熱時間の増加に伴って増加することが知られているが、その詳細については明らかにされていない。そこで、蒸熱時の茶葉中ペクチンの化学的な変化を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 茶葉中の水溶性ペクチン含量が、蒸熱時間の増加に伴って増加するのに対し、水不溶性を含む総ペクチン含量はほぼ一定であり、蒸熱時間の増加に伴って水不溶性のペクチンが水溶性へ変化する(図1)。
  • ペクチンのβ脱離反応産物である不飽和ウロニド含量は、蒸熱時間の増加に伴い、水溶性ペクチン含量と同様な増加傾向を示す。β脱離は、ペクチンを低分子化する分解反応であることから、蒸熱時の水不溶性ペクチンのβ脱離による分解が、水溶性ペクチン含量の増加に寄与すると考えられる(図1、図2)。
  • 水溶性ペクチンを分子量サイズで分画すると、いずれの蒸熱時間においても、分子量約1,100×103(溶出体積約113ml)の大きさのピークが認められ、蒸熱時には、まずこの大きさのペクチンの水溶化が進む(図3の0-60秒)。さらに、蒸熱時間が長くなると、より低分子の水溶性ペクチン含量が増加し、水溶化と同時に低分子化も進む(図3の120-300秒)。

成果の活用面・留意点

  • 図1について、「やぶきた」を含む4品種(「さえみどり」、「ふうしゅん」、「おくみどり」)について分散分析した結果から、水溶性ペクチン含量は蒸熱時間による有意な変化があるが、総ペクチン含量は蒸熱時間による有意な変化がないことを確認している。
  • 緑茶の製造条件によるペクチン浸出性および呈味の違いを解明するための基礎的知見となる。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:多様なニーズに対応する安定多収な茶品種の育成と安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:142f0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:廣野久子、上杉龍士、山口優一
  • 発表論文等:Hirono H. and Uesugi R. (2014) Food Sci. Technol. Res. 20(4):859-865