背景・経緯
食料自給率向上のため、米菓原料や醸造用の加工用米、米粉用米など新規需要米の作付けが推進されていますが、農業法人等の大規模化が進んでおり、移植時期・収穫時期を広く分散できる加工用品種に対する要望が高まっていました。特に、和菓子の原料として硬くなりにくい糯品種に対する要望が高まっており、「コシヒカリ」より晩生で収量性が高く、餅の柔らかさが長持ちする糯品種「ふわりもち」を育成しました。
内容・意義
- 「中部糯110号(後の「きぬはなもち」)」を母とし、「北陸糯199号(後の「里の白雪」)」を父として育成した品種です。
- 育成地(新潟県上越市)での出穂期は「モチミノリ」よりも3日程度早く、成熟期は「モチミノリ」より4日程度早くなります(表1)。
- 穂数は「モチミノリ」よりも少なく、草型は「偏穂重型」です。稈長は「モチミノリ」よりもやや長いですが、耐倒伏性は「やや強」です(表1、写真1、写真2)。
- 育成地での玄米収量は「モチミノリ」に比べて標肥栽培で9%程度、多肥栽培で10%程度の多収です。千粒重は「モチミノリ」よりも2g程度大きくなります(表2)。
- 玄米白度は「モチミノリ」よりもやや白く、外観品質は「モチミノリ」と同等かやや優ります(写真3)。
- 5°Cの冷蔵庫で24時間貯蔵しても餅は柔らかさが長持ちし、餅が硬くなりにくい代表的な品種「滋賀羽二重糯」よりも柔らかさが持続します(図1)。また、餅は外観、伸び、柔らかさに優れ、良食味です。
- 栽培適地は、北陸、関東以西の地域です。
栽培上の留意点
- 穂発芽性が中のため、刈り遅れに留意し、適期収穫に努めてください。
- 過剰な施肥は倒伏による収量・品質低下を招きますので、地力にあわせた適切な肥培管理を行ってください。
品種の名前の由来:餅の柔らかさが長く続くことから命名しました。
今後の予定・期待
平成28年度より広島県で栽培の取り組みが始まっており、数年後には数十haの栽培が見込まれています。

図1 餅の硬さの変化(a:0~6時間後、b:24~48時間後)
加工直後にプラスチックカップに充填した餅を5°Cの冷蔵庫で貯蔵し、硬度をレオメーター(粘弾性や硬度を測定する装置)で測定した。
写真1.「ふわりもち」の圃場での草姿
(左:モチミノリ、中:ふわりもち、右:きぬはなもち)
写真2.「ふわりもち」現地試験の圃場写真(広島県三原市)

写真3.「ふわりもち」の籾および玄米
(左:ふわりもち、中:モチミノリ、右:新大正糯)