プレスリリース
餅が硬くなりにくい水稲もち新品種「ふわりもち」

情報公開日:2016年8月 4日 (木曜日)

ポイント

  • 餅の柔らかさが長持ちし、和菓子などの原料に適した水稲もち新品種「ふわりもち」を育成しました。
  • 北陸では「コシヒカリ」よりも晩生、普及予定先の広島では「ヒノヒカリ」よりも早生のため、作期分散が可能です。
  • 「モチミノリ」よりも10%程度多収で、耐病性にも優れています。

概要

  • 農研機構中央農業研究センターは、餅が硬くなりにくい特性を持つ水稲もち新品種「ふわりもち」を開発しました。
  • 出穂期は育成地では“晩生”で、9月中旬刈り取りの中生の「コシヒカリ」よりも2週間遅く収穫が可能となり、十分に作期分散を図れます。普及予定地の広島では主力品種「ヒノヒカリ」よりも早生となるため、先に収穫が可能です。
  • 倒伏抵抗性が強く、収量性は西日本地域で広く普及している「モチミノリ」に10%程度優る多収です。いもち病や縞葉枯病抵抗性にも優れています。
  • 5°Cの冷蔵庫で貯蔵しても餅は柔らかさが長持ちし、餅が硬くなりにくい西日本で代表的な品種よりも柔らかさが持続します。また、餅は外観が良く食味に優れるため、和菓子などの原料に適しています。

予算:運営費交付金
品種登録出願番号:第31062号(平成28年4月20日出願、7月27出願公表)


詳細情報

背景・経緯

食料自給率向上のため、米菓原料や醸造用の加工用米、米粉用米など新規需要米の作付けが推進されていますが、農業法人等の大規模化が進んでおり、移植時期・収穫時期を広く分散できる加工用品種に対する要望が高まっていました。特に、和菓子の原料として硬くなりにくい糯品種に対する要望が高まっており、「コシヒカリ」より晩生で収量性が高く、餅の柔らかさが長持ちする糯品種「ふわりもち」を育成しました。

内容・意義

  • 「中部糯110号(後の「きぬはなもち」)」を母とし、「北陸糯199号(後の「里の白雪」)」を父として育成した品種です。
  • 育成地(新潟県上越市)での出穂期は「モチミノリ」よりも3日程度早く、成熟期は「モチミノリ」より4日程度早くなります(表1)。
  • 穂数は「モチミノリ」よりも少なく、草型は「偏穂重型」です。稈長は「モチミノリ」よりもやや長いですが、耐倒伏性は「やや強」です(表1、写真1、写真2)。
  • 育成地での玄米収量は「モチミノリ」に比べて標肥栽培で9%程度、多肥栽培で10%程度の多収です。千粒重は「モチミノリ」よりも2g程度大きくなります(表2)。
  • 玄米白度は「モチミノリ」よりもやや白く、外観品質は「モチミノリ」と同等かやや優ります(写真3)。
  • 5°Cの冷蔵庫で24時間貯蔵しても餅は柔らかさが長持ちし、餅が硬くなりにくい代表的な品種「滋賀羽二重糯」よりも柔らかさが持続します(図1)。また、餅は外観、伸び、柔らかさに優れ、良食味です。
  • 栽培適地は、北陸、関東以西の地域です。

栽培上の留意点

  • 穂発芽性が中のため、刈り遅れに留意し、適期収穫に努めてください。
  • 過剰な施肥は倒伏による収量・品質低下を招きますので、地力にあわせた適切な肥培管理を行ってください。

品種の名前の由来:餅の柔らかさが長く続くことから命名しました。

今後の予定・期待

平成28年度より広島県で栽培の取り組みが始まっており、数年後には数十haの栽培が見込まれています。






図1 餅の硬さの変化(a:0~6時間後、b:24~48時間後)
加工直後にプラスチックカップに充填した餅を5°Cの冷蔵庫で貯蔵し、硬度をレオメーター(粘弾性や硬度を測定する装置)で測定した。



写真1.「ふわりもち」の圃場での草姿
(左:モチミノリ、中:ふわりもち、右:きぬはなもち)

 


写真2.「ふわりもち」現地試験の圃場写真(広島県三原市)

 

写真3.「ふわりもち」の籾および玄米
(左:ふわりもち、中:モチミノリ、右:新大正糯)