―共生微生物の活用で限られた資源を有効活用―
ポイント
- 北海道のダイズ栽培において、前作物の種類によってはリン酸施肥量を標準量から削減しても収量や初期生育が変わらない事を示しました。
- 前作物の種類により削減できる肥料の量や適用条件を明らかにし、マニュアルとして取りまとめました。
概要
農研機構と北海道立総合研究機構は、生産者圃場における3年間の実証試験から、前作物の種類を考慮すればダイズ畑へのリン酸施肥量を3割削減できることを明らかにし、技術マニュアルとして取りまとめました。
近年、リン酸資源の偏在や開発途上国の需要拡大によりリン酸肥料の価格が高止まりとなっています。リン酸資源を100%輸入に頼っている我が国では、リン酸肥料の効率的利用に資する技術の開発が求められており、リン酸の減肥に取り組むことは、生産コストや環境負荷の低減にもつながります。
これまで、前作物の種類が違うとダイズの初期生育や収量が異なり(前作効果1))、これが土壌中の植物の根に共生してリン酸などの養分吸収を促進するアーバスキュラー菌根菌(AM菌)2)の作用によるものであることが明らかにされてきました。しかし、生産者の圃場においてその効果は実証されていませんでした。
農研機構と北海道立総合研究機構は、道央・道東地域のダイズ生産者圃場で3年間にわたってリン酸減肥実証試験を行いました。その結果、AM菌が共生する「宿主作物」の跡地では、共生しない「非宿主作物」の跡地に比べてダイズのAM菌感染率が高く、収量を落とさずにダイズへのリン酸施肥を削減できることなどを解明しました
(http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/narc_sehisakugen_man_s03.pdf)。
この技術は、北海道のダイズ栽培において、効率的な施肥によるコスト低減や環境に負荷をかけない技術として普及が見込まれます。また、都府県やダイズ以外の作物の栽培への適用も検討しています。
予算:農林水産省委託プロジェクト「地域内資源を循環利用する省資源型農業確立のための研究開発」
(平成23年度からは「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のためのプロジェクト」、平成21年~平成25年)
道知事公約関連事業予算「新たな行政ニーズに対応した緊急技術開発促進事業(平成23年~平成25年)」
問い合わせ先など
研究担当者
農研機構北海道農業研究センター 大友 量、杉戸智子、岡 紀邦
Tel 011-857-9241
広報担当者
農研機構北海道農業研究センター 情報広報課長補佐 柴垣 誠
Tel 011-857-9260 Fax 011-859-2178
プレス用e-mail:cryoforum@ml.affrc.go.jp
本資料は、農政クラブ、農林記者会、農業技術クラブ、道政記者クラブ、札幌市政記者クラブ、筑波研究学園都市記者会に配布しています。
※農研機構(のうけんきこう)は、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネーム(通称)です。新聞、TV等の報道でも当機構の名称としては「農研機構」のご使用をお願い申し上げます。