開発の社会的背景
菓子用のカボチャ種子はほとんどが輸入品のため、菓子業界から国産種子の供給が求められています。ですが、現在わが国で栽培されている種子食用ペポカボチャ品種は大型果実のため、収穫作業は重労働になります。収穫作業の軽労化のための方策の一つとして、果実が軽く持ちやすい品種の育成が必要です。
研究の経緯
カボチャの主要産地である北海道では、種子食用ペポカボチャ品種として「ストライプペポ」が主に作付けされています。しかし、「ストライプペポ」は果実重量が5kg程度となり、それによる収穫作業の重労働が問題となっています。この状況を踏まえ、農研機構北海道農業研究センターでは、種子収量が「ストライプペポ」と同等で、小型果実と短節間性・株元着果性の特徴を備えた品種の育成を目指し、選抜と交配を行なって「ゴールデンライト」を育成しました。
新品種「ゴールデンライト」の特徴
来歴
「ゴールデンライト」は、農研機構北海道農業研究センターで開発した「豊平2号」(種子親)と「豊平3号」(花粉親)とのペポカボチャF1品種です。
主な特徴
- 雌花および雄花の開花時期は既存種子食用ペポカボチャ品種の「福種」より早く、「ストライプペポ」とほぼ同等です (表1) 。
- 「ゴールデンライト」の主枝の伸長は生育初期から中期にかけて短節間性の草姿を示します。その特性は「ストライプペポ」と類似していますが、主枝の節間長は「ゴールデンライト」の方が短いです。株元着果率は「福種」および「ストライプペポ」よりも高いです (表1) 。
- 株当たりの果実数は「福種」や「ストライプペポ」に比較して多く、平均果重は軽いです。また、果実が円筒形で運びやすいことから、収穫時の作業性は「福種」や「ストライプペポ」と比べて高くなります (表1および写真1) 。
- 「ゴールデンライト」の種子色はセイヨウカボチャの殻を剥いだ種子よりも濃い緑色です。種子100粒重は「福種」や「ストライプペポ」に比べて軽いですが、収穫果数が多いことから、単位面積当たりの種子数ならびに種子収量は「ストライプペポ」と比べて同等以上で、「福種」の2倍以上になります (表1および写真2) 。
栽培上の留意点
- 「ゴールデンライト」は慣行のセイヨウカボチャ産地で栽培可能ですが、特に病害虫の発生が少ない寒地・寒冷地の栽培に向いています。
- 「ゴールデンライト」は蔓および葉に硬い毛があることから、栽培管理においては厚手の手袋や作業服の着用が望ましいです。
- 栽培方法は慣行のセイヨウカボチャに準じます。種子食用ペポカボチャに登録されている農薬はアグロスリン乳剤、イオウフロアブル、イデクリーン水和剤およびサンケイ園芸ボルドーに制限されています (2021年12月時点) 。
- 既存のセイヨウカボチャ品種に比べて貯蔵性が低く、長期間貯蔵した場合は腐敗果の増加や種子の果実内発芽が確認されることがあります。
品種の名前の由来
果実に縞のない黄金色がかった果皮色で、果実の軽いペポカボチャの意味です。
今後の予定・期待
カボチャの食用種子生産を行いたいが、収穫の重労働の観点から栽培を断念していた生産者や産地において普及を展開していきたいと考えています。
なお、栽培用種子の販売は2023年度以降の予定ですが、それまでの間、試験研究用試料として限定量の栽培用種子を有償提供することが可能です。その手続き等の詳細は下記の原種苗入手先へお問い合わせください。
原種苗入手先に関するお問い合わせ
農研機構北海道農業研究センター 研究推進部 研究推進室 知的財産チーム
TEL 011-857-9417 | FAX 011-859-2178
利用許諾契約に関するお問い合わせ
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【品種についてのお問い合わせ】
なお、品種の利用については以下もご参照ください。
【品種の利用方法】
用語の解説
- 種子食用ペポカボチャ
- ペポカボチャはカボチャ属の一つで、未熟果を食べるズッキーニやハロウィンにおける飾りカボチャなどがその仲間になります。このうち遺伝的に種子に殻がない品種は種子食用の品種としています。種子はそのままの食用、油糧用やトッピング素材に使われます。
- 短節間性
- カボチャの多くはつる性の植物ですが、生育全般または生育の中期まで茎が伸びず、節間が詰まった草姿を示すグループがあります。これらを短節間性品種としています。
- 株元着果性
- カボチャ品種の多くは株元から離れたところで着果をしますが、短節間性を有する品種の多くは株元近く(株元から60cm付近まで)に着果します。
参考図