育成のねらい
近年、温暖地(関東・東海・近畿・中国・四国)では、従来の主力品種であった「日本晴」が、品質・食味が不十分であるため作付が減少しています。この問題に対応するために、「日本晴」熟期で、「コシヒカリ」と同レベルの食味と安定した栽培特性を備えた新品種「きぬむすめ」を開発しました。
来歴の概要
平成4年に、「キヌヒカリ」と「愛知92号」(後の「祭り晴」)という、ともに倒れにくく食味が良い両親の人工交配を行った組合せから選抜・育成しました(旧系統名:西海232号)。
命名の由来
「きぬむすめ」の名は、強稈・良食味品種「キヌヒカリ」の後代から生まれた優良品種となることを願って命名しました。
新品種の特徴
- 食味は、「日本晴」に優り「コシヒカリ」並の上中で、栽培地域によっては「コシヒカリ」を上回る事例もあります。
- 出穂期、成熟期は「日本晴」並~2日程度遅い、"早生の晩"のうるち種です。
- 「コシヒカリ」よりも倒れにくく、耐倒伏性は「日本晴」よりやや強い"中"です。
- 収量性は、「日本晴」をやや上回ります。
- 温暖地の主要病害の"いもち病"に対する抵抗性は、「日本晴」並の"中"です。
今後の展開(普及の見通し)
「きぬむすめ」は、「コシヒカリ」並においしく、また玄米品質や耐倒伏性、収量性等の特性が安定しており、欠点の少ない品種です。その特性から見て、「日本晴」の普及地帯に広く適すると考えられます。今年から島根県で奨励品種に採用されており、同県では「祭り晴」に替えて900haの普及を見込んでいます。さらに、近畿・中国・四国地域においても有望視されており、この地域で今後採用県が増え、普及が広がることも期待されます。
草姿(左:「きぬむすめ」、右:「日本晴」)
籾及び玄米(左:「きぬむすめ」、右:「日本晴」)
「きぬむすめ」の立毛草姿(育成地、移植栽培)