プレスリリース
倒れにくく直播に適し、おいしい水稲新品種「ふくいずみ」(水稲農林400号)

- 九州沖縄農業研究センター育成品種の紹介 -

情報公開日:2004年9月30日 (木曜日)

育成のねらい

近年、米価の下落や輸入米との競合、規模拡大や農家の高齢化による労働力不足等の状況の中で、稲作は低コスト・省力化を迫られています。育苗・田植えの省ける直播栽培は省力低コスト化に有効な技術です。しかし、現在の品種は移植栽培向きに改良されており、直播栽培では倒れやすくなる、収量が下がる等の問題を抱えており、直播栽培のメリットが生かせない状況です。このたび、直播栽培で倒れにくく、通常品種より10%近く収量が高く、かつ従来の良食味品種と同レベルの食味を備えた新品種「ふくいずみ」を開発しました。

来歴の概要

1992年に「西海199号」と「北陸148号」(後の「どんとこい」)という、ともに倒れにくく食味が良い両親の人工交配を行った組合せから選抜・育成しました(旧系統名:西海238号)。

命名の由来

「ふくいずみ」の名は、ゆたかな実りと優れた食味で幸福を呼ぶ品種となることを願って命名しました。

新品種の特徴

  • 「ヒノヒカリ」に比べ、出穂期、成熟期ともに早く、九州北部の普通期栽培では"早生の晩"であり、麦作跡で晩播となる場合でも安定して栽培できます。
  • 稈が「日本晴」「ヒノヒカリ」よりやや短く、直播、移植いずれにおいても倒伏に強い特性があります。
  • いもち病には「日本晴」「ヒノヒカリ」より強く「やや強」です。
  • カルパーコーティング種子を用いた苗立ち試験では、「ヒノヒカリ」より早く苗立ちが揃う特性があります。 直播での収量は普通期栽培、晩播栽培とも「日本晴」「ヒノヒカリ」よりも多収です。
  • 米の外観品質は直播、移植いずれにおいても「日本晴」「ヒノヒカリ」並かやや優れ、ご飯の食味も直播、移植いずれにおいても「ヒノヒカリ」並に良好です。

今後の展開(普及の見通し)

「ふくいずみは」は、「ヒノヒカリ」並においしく直播栽培において倒れにくく多収であり、またいもち病にも強いので、直播により低コストで高品質米生産が可能な品種として、九州沖縄農業研究センターで開発したショットガン直播栽培技術とセットで普及を図っていく予定です。今年は佐賀県上峰町の現地圃場等で試作が始まっています。

草姿

草姿

(左:「ふくいずみ」、中央:「日本晴」、右:「ヒノヒカリ」)

籾及び玄米

籾及び玄米

(左:「ふくいずみ」、中央:「日本晴」、右:「ヒノヒカリ」)