ポイント
農研機構は、でん粉や焼酎の原料用サツマイモ新品種「コガネタイガン」を育成しました。「コガネタイガン」は、原料用の主力品種「コガネセンガン」より4割程度多収で、サツマイモ基腐病1)などの主要な土壌病害虫に対する抵抗性を有しています。また、萌芽性2)が優れるため、苗作りも容易です。でん粉の特性は従来のでん粉原料用品種とほぼ同等で、焼酎にした時の酒質(味と香り)は「コガネセンガン」の焼酎に似ています。そのため、南九州におけるでん粉や焼酎原料の安定供給への貢献が期待できます。
概要
サツマイモは、南九州の基幹作物として農業生産ならびに地域経済において重要な品目となっており、南九州におけるサツマイモ生産量の7割以上がでん粉と焼酎の原料として使われています。しかし、サツマイモ基腐病(以下、基腐病)の発生により南九州のサツマイモ生産は深刻な被害を受けました。基腐病対策の推進により被害は減少傾向にあるものの、生産者の高齢化に伴う栽培面積の減少も相まって生産量は十分回復しておらず、とりわけでん粉の原料不足はいまだかつてない深刻な状況にあります。また、南九州では、基腐病を原因としない塊根腐敗症状の発生も問題となっています。この課題に対応するため、農研機構は、2021年に育成した「みちしずく」に続く原料用の基腐病抵抗性品種の第二弾として、「コガネタイガン」を育成しました。

「コガネタイガン」は、原料用の主力品種「コガネセンガン」よりも収量が優れ、「みちしずく」並みに多収で、基腐病に対する抵抗性があります。塊根腐敗症状の原因の一つであるサツマイモつる割病3)に対しては、「みちしずく」よりも強い抵抗性を有しており、また、線虫にも強く、複数の主要な病害虫に対する抵抗性(複合抵抗性)を持っていることから、安定生産が期待できます。「みちしずく」よりも萌芽性に優れているため、苗を作りやすく、早期植付の作型4)にも対応しやすいです。でん粉の特性は従来のでん粉原料用品種と同様で、焼酎にした時の酒質は「みちしずく」と同様、「コガネセンガン」に似ています。でん粉と焼酎、いずれの原料としても利用できる汎用性を有していることから、「みちしずく」と併せて普及させることで、単一品種を栽培することによるリスクの軽減、サツマイモ生産量の向上と原料の安定供給への貢献が期待できます。
関連情報
予算:運営費交付金、生研支援センター (食料安全保障強化に向けた革新的新品種開発プロジェクトのうち食料安全保障強化に資する新品種開発)
品種登録出願番号:第37838号(2025年1月21日出願、2025年5月14日出願公表)