プレスリリース
(研究成果)高温登熟性に優れ、多収で病害に強い良食味水稲新品種「みなもさやか」

情報公開日:2026年4月14日 (火曜日)

ポイント

農研機構は、高温登熟性に優れた良食味水稲新品種「みなもさやか」を育成しました。本品種は登熟期1)が高温でも玄米品質が低下しにくいことに加え、いもち病に強く、縞葉枯病2)(しまはがれびょう)に抵抗性があります。さらに、西日本地域の主力品種「ヒノヒカリ」より2割程度多収です。熟期は「ヒノヒカリ」並みで、食味も「ヒノヒカリ」と同等です。「ヒノヒカリ」の作付けが可能な地域での栽培に適しています。

概要

ほ場での草姿(育成地:福岡県筑後市 2024年)

近年、温暖化による登熟期の高温の影響で、西日本地域の主力品種「ヒノヒカリ」では白未熟粒3)が多発し、玄米品質の著しい低下が大きな問題となっています。「にじのきらめき」等の高温登熟性に優れた品種の普及も始まっていますが、「ヒノヒカリ」とは熟期が異なることから、主力品種である「ヒノヒカリ」の代わりとなる品種が求められていました。そこで、農研機構は、高温登熟性に優れ、登熟期間中、高温に遭遇しても玄米品質が低下しにくい水稲新品種「みなもさやか」を育成しました。玄米の外観品質は「ヒノヒカリ」よりも良好で、「ヒノヒカリ」に比べて育成地(福岡県筑後市)における標肥栽培で2割程度多収です。炊飯米の食味は「ヒノヒカリ」と同等の良食味です。いもち病に強く、縞葉枯病抵抗性を持ち、「ヒノヒカリ」の栽培が可能な関東以西の平坦地で栽培が可能です。本品種の早期の普及を図るため、種子の生産・販売(譲渡)を希望する団体を募集します。

関連情報

予算:運営費交付金、農林水産省事業「革新的新品種開発加速化緊急対策のうち政策ニーズに対応した革新的新品種開発」
品種登録出願番号:「第38275号」(令和7年11月6日出願、令和8年2月17日公表)

問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構 九州沖縄農業研究センター 所長兼松 聡子
研究担当者 :
同 暖地水田輪作研究領域 稲育種グループ田村 克徳、笹原 英樹
広報担当者 :
同 研究推進室 広報チーム長緒方 靖大

詳細情報

背景

西日本地域では、温暖化の進行に伴う登熟期の高温により、主力品種である「ヒノヒカリ」の玄米品質の低下が大きな問題となっており、新品種の開発が求められています。

そこで、農研機構は、「ヒノヒカリ」よりも高温登熟性に優れ、いもち病に強く、縞葉枯病抵抗性で多収の良食味品種「みなもさやか」を育成しました。

新品種「みなもさやか」の特徴

【来歴】
「みなもさやか」は、玄米品質が優れ、良食味の「にこまる」のいもち病と縞葉枯病の病害抵抗性を改良した系統を母とし、多収で玄米品質が優れる良食味品種「歓喜の風」を父とする交配から育成しました。

【特長】

  • 育成地である福岡県筑後市での出穂期は8月23日頃、成熟期は10月7日頃で「ヒノヒカリ」とほぼ同じです(表1)。
  • 稈長は「ヒノヒカリ」より約9cm短いです(表1)。
  • 育成地での玄米収量は「ヒノヒカリ」より約2割多収です(表1)。
  • 玄米品質は「ヒノヒカリ」より優れます(表1、図1、写真1)。
  • 食味は「ヒノヒカリ」と同等です(図2)。
  • 耐倒伏性は"中"、穂発芽性は"やや易"、高温登熟性は"やや強"です(表2)。
  • 葉いもちほ場抵抗性は"強"、穂いもちほ場抵抗性は"やや強"、縞葉枯病に"抵抗性"です(表2)。

【その他栽培特性および栽培上の注意点】

  • 「ヒノヒカリ」の栽培が可能な関東以西の平坦地で栽培できます。
  • 「ヒノヒカリ」と比べると倒伏しにくいですが、耐倒伏性のランクは"中"なので倒伏には強くありません。
  • 穂発芽性が"やや易"のため、刈り遅れを避け、適期収穫に努めてください。
表1. 育成地での標肥移植栽培における生育、収量特性および玄米品質
農研機構九州沖縄農業研究センター筑後・久留米拠点(福岡県筑後市)における成績。試験年次は2019~2024年、移植時期は6月中旬、栽植密度は30×16cm、施肥はLP複合100D-80を窒素成分で0.8kg/a施用した。倒伏程度は0(無)~5(完全倒伏)、玄米品質は1(上上)~9(下下)のいずれも目視による評価。2019、2020年はトビイロウンカによる被害のため、玄米収量、玄米千粒重、玄米品質の算出から除外した。
図1. 奨励品種決定調査4)における「みなもさやか」と「ヒノヒカリ」の玄米品質の比較
2022~2024年の奨励品種決定調査のうち「みなもさやか」と「ヒノヒカリ」を同時に供試した試験から作成。試験地は九州、四国、近畿、中部の17府県。玄米品質の評価は1(上上)~9(下下)の目視による評価。緑色の斜線は「みなもさやか」と「ヒノヒカリ」の玄米品質が同じ場合を示している。■などのシンボルが斜線よりも左上にあれば、「みなもさやか」が「ヒノヒカリ」より優れることを示す。
図2.育成地における「みなもさやか」の食味試験結果
基準(0)は、食味試験用に別ほ場で栽培した「ヒノヒカリ」。各項目は基準と比較し、より優れる場合を+とした。ただし、粘りはより粘る場合を+、硬さはより硬い場合を+とした。
表2. 「みなもさやか」の障害耐性および耐病性
耐倒伏性、高温登熟性、いもち病ほ場抵抗性は、1(極弱)~9(極強)の9段階評価、
穂発芽性は1(極易)~9(極強)の9段階評価。
写真1. 「みなもさやか」の玄米(2025年育成地)
「みなもさやか」は白未熟粒が少ない。

品種の名前の由来

清流の水面(みなも)のような透明感のある良質な米が生産されることを願って命名しました。

今後の予定・期待

登熟期の高温による玄米品質の低下が著しい「ヒノヒカリ」に代えて普及を目指します。

種子については、農研機構と利用許諾契約を締結した団体が増殖を行い、2028年作付け用から生産者への供給が始まる見込みです。

原種苗入手先に関するお問い合わせ

「みなもさやか」の種子の生産・販売(譲渡)を希望する団体を募集します。お問い合わせ先は次項をご覧ください。農研機構と利用許諾契約を締結した後、育成地から種子生産用の原種苗を提供します。

食用として生産を希望される方は以下のサイトで種苗の入手先をご確認ください。2028年作付け用種子から生産者への供給が始まる見込みです。
農研機構育成品種の種苗入手先リスト
https://www.naro.go.jp/collab/breed/seeds_list/index.html

まだ、リストに掲載が無い場合または掲載先での在庫が無い場合は、次項のメールフォームでお問い合せください。

利用許諾契約に関するお問い合わせ

下記のメールフォームでお問い合わせください。
農研機構HP【研究・品種についてのお問い合わせ】
https://prd.form.naro.go.jp/form/pub/naro01/hinshu

なお、品種の利用については以下もご参照ください。
農研機構HP【品種の利用方法についてのお問い合わせ】
https://www.naro.go.jp/collab/breed/breed_exploit/index.html

用語の解説

登熟期
イネの出穂・開花後に穂へデンプンなどの養分が蓄積され、籾(玄米)が充実し成熟する期間を指します。[ポイントへ戻る]
縞葉枯病
イネ縞葉枯ウイルスによって引き起こされる病害です。ヒメトビウンカによって媒介されます。発病すると、新葉が退色し、こより状に垂れ下がって枯死する症状(ゆうれい症状)や葉脈に沿って淡緑色~黄白色の縞状の病斑が生じます。多発すると収量の減少につながり、ウイルスを保有したヒメトビウンカが増加して地域の稲作へも影響します。ヒメトビウンカは麦類を好むので稲麦二毛作地帯で発生が多い傾向があり、近年は全国的に増加傾向にあります。[ポイントへ戻る]
白未熟粒
胚乳(白米として食べる部分)の一部または全部が白く濁ってしまった玄米のことをいいます。登熟期の高温によりデンプンの蓄積が阻害されること等により発生します。米の検査等級の低下の原因となります。また、粒が砕けやすいので精米時の歩留まりが悪くなります。[概要へ戻る]
奨励品種決定調査
各県で作付けを奨励する品種を決めるために農業試験場等で実施される栽培試験です。新品種「みなもさやか」の特徴へ戻る]