農研機構
タカラバイオ株式会社
ポイント
農研機構とタカラバイオ株式会社は、牛に呼吸器病を引き起こすパスツレラ科細菌3種を検出し識別できるキット及びこれらの菌種の薬剤耐性菌1)が共通に保有する6種類の薬剤耐性遺伝子を検出し識別できるキットを開発しました。これらはマルチプレックスリアルタイムPCR2)を用いた検査法で、2つのキットを同時に用いることで、従来法では4~5日程度を要していた原因菌の同定及び薬剤耐性の判定を最短1日で行うことができ、早期の抗菌剤3)の選定を可能とします。これらの検査キット(研究用)は、2024年8月21日にタカラバイオ株式会社から発売されます。
概要
牛の呼吸器病は、細菌やウイルスなどさまざまな病原体が複合的に関与する上部気道炎、肺炎などの疾病で、毎年40万件近くの発生があり、その対策は畜産における重要な課題のひとつとなっています。呼吸器病は細菌感染を伴う場合に重篤化・慢性化しやすく、治療対象となった肺炎の8割以上に細菌が関与していることから、治療には抗菌剤が幅広く用いられています。重篤化を防ぐためには原因菌に有効な抗菌剤を早期に投与することが重要ですが、有効薬剤の選択に必要な原因菌の分離・同定と薬剤感受性試験4)には最短でも4~5日の時間を要します。もし原因菌が薬剤耐性菌であり、その菌への効果が低い薬剤を初期治療に用いた場合、治癒が遅れるばかりでなく、薬剤耐性菌のまん延リスクを高めることにもなり、以降の衛生対策にも影響を及ぼす可能性があります。
農研機構とタカラバイオ株式会社は共同で、牛呼吸器病の主要な原因菌であるパスツレラ科細菌3菌種(Mannheimia haemolytica、Pasteurella multocida、Histophilus somni)とこれらが共通に保有する6種類の薬剤耐性遺伝子を簡便・迅速かつ同時に検出及び識別できる検査法を開発しました(図1)。
本検査法により有効薬剤の選定にかかる作業負担と時間が軽減されることで、早期に有効な薬剤の選定が可能となり、呼吸器病の重篤化による損失の回避と薬剤耐性菌のまん延リスクの低減が期待できます。
本検査法に対応した2つの検査キット (研究用)は、2024年8月21日にタカラバイオ株式会社から発売されます。
関連情報
予算 : 農林水産省委託プロジェクト研究「安全な農畜水産物安定供給のための包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業(環境への抗菌剤・薬剤耐性菌の拡散量低減を目指したワンヘルス推進プロジェクト)」JPJ008617. 22682153
疫学情報専門役吉岡 都