ポイント
- 農研機構は、パン・中華めん用小麦1)品種として東北・北陸地域で栽培が増加している「夏黄金 (なつこがね) 」2)について、福島県での栽培マニュアルを福島県農業総合センター及び京都大学と共同で作成し、ウェブサイトで公開しました。
- 福島県内(浜通り地方、中通り地方、会津地方)において、本マニュアルに沿って「夏黄金」を栽培することで、省力かつ高い収量が期待できます。
- 本マニュアルでは、「夏黄金」の一般的な栽培特性やパン・中華めん用としての品質特性も解説しており、「夏黄金」の活用のために、広く参考にしていただけます。
概要
東日本大震災の被災地域では、農業・食品産業の復興のため、省力的で高収益な作物の栽培が求められています。一方最近では、国産小麦の品質向上が顕著であり、地産地消の高まりや輸入小麦との価格差縮小と相まって、国産小麦を使用したこだわりのパンや加工品の生産が増えています。
そこで2024年7月、農研機構は、パン・中華めん用小麦として評価が高まるとともに栽培が増加している「夏黄金」について、福島県内の小麦生産者が省力的な栽培で高収量を実現できるよう「福島県における『夏黄金』栽培マニュアル」を作成し、ウェブサイトで公開しました。
本マニュアルは小麦生産者、生産予定者を対象とし、福島県内 (浜通り地方、中通り地方、会津地方) における「夏黄金」の栽培方法を、地方毎の作業実施時期を示して解説しています。
本マニュアルを活用した小麦「夏黄金」の福島県における普及拡大を通じて、東日本大震災被災地域の農業復興とともに、国産小麦を用いたパンや中華めんの販売促進による食品産業への貢献が期待されます。
【マニュアル掲載URL】
福島県における小麦「夏黄金」栽培マニュアル
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/163945.html
<関連情報>
予算 : 農林水産省 (令和3年度~令和4年度) ・福島国際研究教育機構(F-REI) (令和5年度)「先端技術を活用した施設野菜・畑作物の省力高収益栽培・出荷技術の確立」 (JPFR23060107)
用語の解説
- パン・中華めん用小麦
- 日本めん(うどん)用小麦に比べて、パン・中華めん用小麦には高いタンパク含量が求められます。小麦粉に水を加えて捏ねることによりタンパクからグルテンが形成され、生地に弾力と伸展性(伸びのよさ)が生じます。[ポイントへ戻る]
- 「夏黄金」
- 「夏黄金」は耐雪性をもつ寒冷地向け品種で、根雪期間が100日までの地域で栽培できます。生地の伸張抵抗が強く、製パン適性に優れる硬質小麦です。やや早生種であり、耐雪性は中程度で寒冷地での栽培に適します。「ゆきちから」と比較して収量性は同程度で穂発芽耐性および赤かび病抵抗性は優っています。「夏黄金」という名前には、初夏に収穫期を迎え黄金色に輝く小麦をイメージし、地域の繁栄と豊かな食生活への期待が込められています。2019年に品種登録されました(登録番号:第27456号)。[ポイントへ戻る]
問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構東北農業研究センター 所長川口 健太郎
研究担当者 :
同 畑作園芸研究領域 上級研究員池永 幸子
広報担当者 :
同 広報チーム長田村 徳寿