プレスリリース
(研究成果) 東北中南部向け初の多収米粉パン用新品種「ゆきふわり」を育成

情報公開日:2026年9月 8日 (火曜日)

ポイント

農研機構は、東北地方の中南部での栽培に適し、多収で米粉パンに向く新品種「ゆきふわり」を育成しました。
従来、東北中南部ではパン用の米粉用向け専用品種がなく作付けが難しい状況でしたが、「ゆきふわり」の普及により東北中南部における米粉パン用米の安定生産が可能となり、不足している米粉の供給増が期待されます。

概要

「ゆきふわり」の米粉100%のパンの写真
「ゆきふわり」の米粉100%のパン

水田の有効活用及び食料の安定供給を確保する観点から、米粉の活用・利用拡大が進められていますが、高まる米粉需要に対して生産量が十分に確保されていません。

これまでパン用の米粉用向け専用品種1)としては、多収で、製粉時のデンプン損傷が少なく、膨らみが良い「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」等が育成されています。しかし、これらは主に関東以西を栽培適地としており、東北中南部での栽培に適する専用品種はありませんでした。

こうした背景のもと、農研機構は東北中南部向けとして初めて多収の米粉パン用新品種「ゆきふわり」を育成しました。「ゆきふわり」は、「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」と同等の製パン適性を持ち、東北中南部で広く栽培されている「ひとめぼれ」と収穫時期はほぼ同じで、収量は「ひとめぼれ」より2割以上多収です。「ゆきふわり」の普及により、東北中南部における米粉パン用米の安定生産が可能となり、不足している米粉の供給増が期待されます。

関連情報

予算 : 運営費交付金、生研支援センター(食料安全保障強化に向けた革新的新品種開発プロジェクトのうち食料安全保障強化に資する新品種開発)

品種登録出願番号 : 第38230号 (令和7年10月10日出願、令和8年3月2日出願公表)

問い合わせ先など
研究推進責任者 :
農研機構東北農業研究センター 所長若生 忠幸
研究担当者 :
同 東北農業研究センター スマート水田輪作研究領域 上級研究員重宗 明子
同 食品研究部門 研究推進部 技術適用研究チーム長梅本 貴之
広報担当者 :
同 東北農業研究センター 広報チーム長山下 圭子

詳細情報

開発の社会的背景と研究の経緯

水田の有効活用及び食料の安定供給を確保する観点から、2009年に「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」が制定され、米粉の活用・利用拡大が進められています。米粉用米の需要量は2009年には5千トンでしたが、米粉の特徴を活かした商品開発が進み消費者ニーズが高まってきたこと等により、2025年には6万トンにまで拡大しました。

一方、米粉用米の生産量は、昨今の主食用米の不足により主食用米の作付けが増え、米粉用米の作付けが減少したため、2026年は需要に対して3万トンの不足が見込まれています。このような米粉需要の高まりに対応するため、多収の米粉用向け専用品種の開発・普及が求められています。

米粉パン用の専用品種(以下、米粉パン用品種)としては、関東以西向けの「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」等が育成されていますが、米の主産地である東北中南部で栽培可能な多収の米粉パン用品種はこれまで育成されていませんでした。このため、東北中南部では米粉パン用米の安定生産が難しく、専用品種を対象とする支援制度の活用も限定的でした。

そこで農研機構は、東北中南部での栽培に適する、多収の米粉パン用品種の育成に取り組みました。

新品種「ゆきふわり」の特徴

東北中南部向け米粉パン用品種に求められる特徴としては、対象地域で登熟できる熟期であること、耐冷性を有すること、多収で多肥栽培でも倒伏しないことが原料としてのコストを抑えるために必須となります。また、「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」等の多収品種にはトリケトン系4-HPPD阻害型除草剤2)に感受性の品種がありますが、使用できる除草剤の選択肢を増やすためには非感受性であることも必要です。製パン適性については、アミロース3)含有率が一般的なうるち米品種よりやや高いことや、パンにした時の膨らみが良いこと等が挙げられます。
  • 「ゆきふわり」は、耐冷性の強い「北海302号(のちの「ゆきさやか」)」に多収の加工用品種「ふくひびき」を1回戻し交配して育成した「羽系1870」に、さらに「ふくひびき」を交配して育成しました。「ゆきふわり」の耐冷性は「ふくひびき」より明らかに強く"やや強"に改良されました。
  • 育成地 (秋田県大仙市) における出穂期・成熟期は、「ふくひびき」より4~5日ほど遅く、一般的な主食用米の「ひとめぼれ」と比べると出穂期は2日ほど早く、成熟期は2日ほど遅く、東北中南部での栽培に適します (表1)。一方で、主に関東以西で作付けされている米粉パン用品種の「笑みたわわ」は、夏期が異常に高温になった2023年では成熟が早まり、「ゆきふわり」と成熟期がほぼ同じでしたが、2024年は出穂期で9日、成熟期で18日遅くなりました (表2)。
  • 玄米収量は、「ふくひびき」より約7%、「ひとめぼれ」と比べると20%以上多収です。耐倒伏性は強く、多肥条件でもほとんど倒れません (表1)。トリケトン系4-HPPD阻害型除草剤には"非感受性"です。
  • 白米のアミロース含有率は登熟気温により変動しますが、おおむね18~20%で、「ひとめぼれ」よりやや高く、「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」よりやや低いです (表3)。
  • 湿式気流粉砕4)によるデンプン損傷度5)は、「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」、「コシヒカリ」と同様に2%以下と十分に低い値を示しました。米粉100%パン (増粘剤無添加のグルテンフリー米粉パン) の比容積6)は、「コシヒカリ」より明らかに高く、「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」と同等です (図1)。また、製パン後、時間が経過しても「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」、「コシヒカリ」のパンよりも柔らかい傾向があります (図2)。
  • 栽培上の注意点として、穂発芽性は「ふくひびき」と同等の"やや易"であるため、適期刈取が必要です。また、葉いもち病圃場抵抗性は"やや弱"、イネ縞葉枯病には罹病性のため、常発地で栽培する場合はそれぞれ徹底した防除が必要になります。
表1 「ゆきふわり」の生育、玄米収量、品質特性 (育成地:秋田県大仙市、2020~2024年)
「ゆきふわり」の生育、収量、品質特性のデータを示した表
表2 「ゆきふわり」と「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」の出穂期、成熟期の比較
(育成地:秋田県大仙市)
「ゆきふわり」と「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」の出穂期、成熟期のデータを示した表

注. 2023年の「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」は標肥区、他は多肥区の結果を示す。

表3 「ゆきふわり」のアミロース含有率(%)の年次間差
(育成地:秋田県大仙市)
「ゆきふわり」のアミロース含有率(%)の年次間差のデータを示した表

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「ゆきふわり」を含む4品種でそれぞれ製造した米粉100%パンの比較写真写真
図1 「ゆきふわり」の米粉100%パン (増粘剤無添加のグルテンフリー米粉パン) の膨らみの様子(写真)と比容積、デンプン損傷度の品種間比較 (2024年育成地:秋田県大仙市産、コシヒカリのみ茨城県産)
「ゆきふわり」を含む4品種でそれぞれ製造した米粉100%パンの比較写真写真
図2 「ゆきふわり」の米粉100%パンの硬さの推移
(2024年育成地:秋田県大仙市産、コシヒカリのみ茨城県産)
※ クリープメーターによる圧縮試験 (厚さの25%まで圧縮した際の硬さ応力)

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品種の名前の由来

雪のように白く、ふわりとしたパンをイメージして命名しました。

今後の予定・期待

宮城県学校給食会によるコッペパンの試作では、従来の「ひとめぼれ」より膨らみが良い等、製造の各段階において良好な評価が得られており、味も良好でした。また、宮城県大崎市のパン工房でパン (グルテン入り米粉パン、米粉100%のパン) やクッキーを試作したところ(図3)、米粉100%のパン (商品名「ごはんパン」) は、「ミズホチカラ」を使ったパンと比べて柔らかさが長く続く傾向がみられました。アミロース含有率が「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」よりやや低いことが一因と考えられます。このような特性も活かすことで、米粉パンにとどまらず菓子等への用途が広がることが期待されます。

農研機構生物系特定産業技術研究支援センター「食料安全保障強化に向けた革新的新品種開発プロジェクト」で共同研究を行った全国農業協同組合連合会 (全農) では、2026年度より宮城県で「ゆきふわり」の種子生産及び米粉パン用米の生産を開始しており、生産された米は全農・JAを介して流通される予定です。

東北中南部向けとして初めての多収の米粉パン用品種「ゆきふわり」の育成により、米の主産地においても米粉パン用品種の作付けが拡大し、学校給食等で米粉パン提供の機会が増えることが期待されます。

グルテン入り米粉パンの写真
1. グルテン入り米粉パン
クッキーの写真
2. クッキー
「ごはんパン」の写真
3. 「ごはんパン」(米粉100%パン)
図3  「ゆきふわり」で試作したパン及びクッキー
(協力:宮城県大崎市 社会福祉法人大崎誠心会 障害福祉サービス事業所 工房パルコ)

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原種苗入手先に関するお問い合わせ

以下のメールフォームよりお問い合わせ下さい。

農研機構東北農業研究センターHP【その他お問い合わせ】

なお、2027年度作付け用種子は、主に利用許諾契約用(種苗会社向け)に提供します。生産者向けの種子は数量に限りがありますのでご了承ください。

利用許諾契約に関するお問い合わせ

以下のメールフォームよりお問い合わせ下さい。

農研機構HP【農研機構の品種の利用許諾についてのお問い合わせ】

なお、品種の利用については以下もご参照ください。

農研機構HP【品種の利用許諾について】

用語の解説

米粉用向け専用品種

国の委託試験等によって米粉用に育成され、パン・麺用向けの加工適性が高いことが確認された品種を指します。ほかにも、都道府県知事の申請に基づき地方農政局長等が特に認めるものがあります。

※ 参考: 需要に応じた米の生産・販売の推進に関する要領[概要へ戻る]

トリケトン系4-HPPD阻害型除草剤
除草剤成分としてベンゾビシクロン、テフリルトリオン、メソトリオン等、トリケトン成分を含む除草剤を指します。トリケトン系成分は、多くの除草剤に含まれる重要な成分となっています。「とよめき」、「やまだわら」等の多収品種や、米粉パン用品種の「笑みたわわ」、「ミズホチカラ」は、これらの薬剤に感受性を示し、散布すると枯死することが確認されていますが、「ゆきふわり」は非感受性のため耐性があります。[新品種「ゆきふわり」の特徴へ戻る]
アミロース
アミロペクチンと共にデンプンを構成する成分です。デンプンは、グルコース (ブドウ糖) が直鎖状につながったアミロースと、分枝状につながったアミロペクチンから構成されます。アミロース含有率が低いほど、炊飯米の粘りは強くなります。日本の一般的なうるち米品種のアミロース含有率は、15~20%程度で、「ミルキークイーン」等の粘りが強い低アミロース品種は5~14%程度、もち米は0%です。一般的なうるち米品種よりやや高い20~22%程度のアミロース含有率の場合にパンの膨らみが良い傾向にあり、米粉パンに適します。[新品種「ゆきふわり」の特徴へ戻る]
湿式気流粉砕
米粉の製造方法の一つで、精白米を水浸漬した後に気流粉砕機で粉砕する方法です。デンプン損傷が小さく、粒子径が小さい米粉を製造できます。[新品種「ゆきふわり」の特徴へ戻る]
デンプン損傷度
製粉時の衝撃や、発生する熱によって米のデンプンに割れや部分的な糊化が生じます。この度合いをデンプン損傷度と呼んでいます。デンプン損傷度が高くなると製パン時に生地の吸水量が多く、重い生地となり、米粉パンの比容積が低下することが知られています。[新品種「ゆきふわり」の特徴へ戻る]
比容積
単位質量(g) 当たりの体積(ml) を示します。パンの膨らみの指標値として使われます。比容積が大きいほど、膨らみの良いパンであることを示します。[新品種「ゆきふわり」の特徴へ戻る]