「旬」の話題

技術が築いたイチゴ大国

日本人はイチゴが大好きです。冬から春にかけてはスーパーなどの店頭に色鮮やかなイチゴが並び、豊かな食生活とビタミンCなどの栄養補給に役だっています。イチゴがこれほど一般的な果物になった背景には、優秀な品種や栽培技術の開発があります。

桃の香りのするワイルドストロベリー野生のイチゴは海外にも日本にも古くからあり、果実は小さいけれど良い香りのする野生種なども見られます。一方、現在の栽培イチゴは新しい作物と言えます。南アメリカ大陸西海岸原産の野生種から栽培化された栽培系チリイチゴとアメリカ合衆国東部原産の野生種バージニアイチゴとの種間雑種として18世紀中頃にヨーロッパで作出され、世界に広がりました。我が国に本格的に導入されたのは明治以降です。

栽培風景(桃薫)イチゴは自然条件では秋冬の短日低温により花芽(花になる組織)ができ、翌春の長日高温によって花芽が発達し4~5月に開花、5~6月に成熟期を迎えます。つまり、イチゴの本来の旬は春~初夏なのです。しかし、クリスマスケーキに大量のイチゴが求められること、暖かい季節は流通段階で果実が傷みやすいことなどから、冬場に生産する促成栽培技術が開発されました。高品質な品種育成とあわせて技術は高度化し、現在では施設での促成栽培が生産の大部分を占めるようになっています。
一方、我が国のイチゴ品種改良の歴史は1899年に福羽逸人博士により育成された名品種「福羽(ふくば)」から始まります。高い品質や栽培しやすさを目指して多くの品種が育成されました。1980年代には西日本向けの「とよのか」、東日本向けの「女峰(にょほう)」が育成され、しばらく2大品種の時代となりました。現在は「とちおとめ」、「あまおう」、「さちのか」など多様化した新品種が次々と作られています。
こうした技術開発により、私たちは冬~春の長期間にわたり手頃な価格で美味しいイチゴを食べられるようになりました。農研機構は上記の「とよのか」、「さちのか」の他、近年、次のような品種も育成しています。まだ供給量が少ないのですが、店頭で見かけることがありましたら是非お試し下さい。

農研機構のイチゴ新品種の例

桃薫(とうくん)

桃薫の果実「桃薫」は桃やココナッツに似た香りとサーモンピンクの色が特徴で、今までのイチゴとは全く違った風味が楽しめます。桃に似た香りのワイルドストロベリー(野生種)、食味の良い品種「とよのか」などの交配により誕生した種間雑種の新品種です。
フレッシュな果実そのままだけでなく、ケーキやデザートなどにも利用されています。

おいCベリー

おいCベリーの果実「おいCベリー」は7粒で1日分のビタミンC摂取基準量(100mg)を摂取できる新品種です。ビタミンCが「とよのか」の約1.6倍含まれ、さらに高い抗酸化活性を有しています。果実は「とよのか」より大きく、濃赤色で光沢があり、糖度が高く、食味も良好で、日持ち性も優れています。

報道機関での紹介

  • 日本テレビ「news every」(平成25年2月18日放映)(桃薫を紹介)
    (以下のURLから「桃薫」で検索して下さい。)
    http://www.ntv.co.jp/
  • TBSテレビ「はなまるマーケット」(平成25年2月18日放映)(おいCベリーを紹介)