品種詳細

ひめこなつ

梅雨前に収穫ができる黄肉のモモ品種です。開花から収穫までの日数が60日前後と、従来の早生品種に較べて10日以上短いので、開花が3月中となる西南暖地などの早生モモ地域では5月下旬から6月始めに収穫できます。そのため梅雨による品質低下が回避され、安定した品質の果実が生産できます。露地モモの出荷時期の大幅な前進化と、早生モモの品質安定化に役立つと期待されます。

主要特性

  • 樹勢はやや強く、樹姿はやや直立します(図4)。花はピンクの一重咲き、正常花粉があり、自家結実性で果実の着生は良好です(図2、図3))。開花期はやや早く、「ちよひめ」、「あかつき」等と同時期になります。
  • 果実の収穫期は育成地で6月上中旬となり、「ちよひめ」、「ちよまる」より10日以上早く収穫される極早生品種です(表1)。
  • 果皮の地色は黄色で、果面全体に縞状に紅色の着色が覆い、外観は良好です。果形は扁円形で、果面の裂果はなく無袋栽培ができます(図1)。果実重は平均で120 g前後と小ぶりです。
  • 果肉は溶質で肉質は中、果汁は多く、核は小さく粘核で、核割れが多く発生します。糖度は12%を超え、「ちよひめ」及び「ちよまる」より多く、酸味は少なく、渋味の発生も少ないため、食味は極早生としては良好です(表1)。
  • 果実が小さく、花芽の着生が良好なので、摘らい、摘果等を早めに行うとともに、強めの結果枝を用い、果実肥大を促進する必要があります。
  • せん孔細菌病、灰星病には罹病性ですが、通常の薬剤散布により被害を回避することが出来ます。
  • 既存のモモ産地で栽培が可能ですが、収穫期が従来の品種に較べて極めて早いので、西南暖地の早出しモモ栽培地域の露地栽培に特に有効です。


図1 「ひめこなつ」の果実
図1 「ひめこなつ」の果実


図2 「ひめこなつ」の結実状況
図2 「ひめこなつ」の結実状況


図3 「ひめこなつ」の花
図3 「ひめこなつ」の花


図4 「ひめこなつ」の樹姿
図4 「ひめこなつ」の樹姿

 

 

表1

出願番号
(出願日)
公表日 登録番号
(登録日)
育成者権の存続期間
21446
(2007年9月11日)
2007年12月21日 17787
(2009年3月 6日)
30年
(満了日:2039年3月 6日)
交配組み合わせ 旧系統名
182-3[{岡山446×れ-40(白桃×白鳳)}×65-20(高陽白桃×さおとめ)]の自然交雑実生 モモ筑波118号

栽培適地

既存のモモ産地で栽培が可能ですが、収穫期が従来の品種に較べて極めて早いので、西南暖地の早出しモモ栽培地域の露地栽培に特に有効です。

農林認定品種(旧:命名登録品種)

登録番号:もも農林25号

登録年月日:2008年4月

育成担当者

山口正己、土師 岳、八重垣英明、京谷英寿、西村幸一、鈴木勝柾、三宅正則、末貞佑子、中村ゆり、小園照雄、木原武士、内田 誠、福田博之

発表論文

果樹研究所研究報告 13号, p.7-15(2012-03) : モモの新品種'ひめこなつ'