品種詳細

さくひめ

モモ品種「さくひめ」は、開花に必要な低温にさらされる時間(低温要求量)が日本の主要品種の約半分に短縮された早生品種で、温暖化により冬の気温が高くても安定した開花と果実生産が見込めます。果実品質は早生の主要品種である「日川白鳳」と同等で、「日川白鳳」より5日ほど早く収穫できます。

主要特性

  • 低温要求時間は茨城県つくば市では555時間で、日本の主要品種の約半分です(表1)。温暖化により冬の気温が上昇しても、安定した開花が見込めます。
  • 果実は重さが250 g程度で、「日川白鳳」と同程度です(表2、写真1, 2)。
  • 果肉色は白色です。糖度は12~13%前後で「日川白鳳」と同程度となり、酸味はpH 4.6程度と少なく、食味良好です(表2)。
  • 樹勢は強く、花芽は多く着生します。花粉を有するため受粉樹は不要で、結実良好です。低温要求時間が短いため開花盛期は育成地(茨城県つくば市)では3月下旬と早く、早生の主要品種である「日川白鳳」よりも9日程度早くなります。また、収穫盛期も「日川白鳳」より5日程度早く、6月下旬となります(表3)。
  • 「日川白鳳」に比べて果皮の地色に緑色が残りやすく、赤く着色する部分は同等かやや少なくなる傾向があります。果点や裂果が「日川白鳳」よりも多く発生する年があります(表2)。
  • 生理落果や核割れの発生は少なく、問題とはなりません。
  • 灰星病、せん孔細菌病などには既存の品種と同様に罹病性のため、同等の防除が必要となります。
  • 開花期が早いため、開花期に晩霜害を受けるリスクが他の品種よりも高い可能性があります。
  • 「さくひめ」の名は、他の品種よりも早く花が咲くことに由来します。

写真1 写真2

表1

表2

表3

出願番号
(出願日)
公表日 登録番号
(登録日)
育成者権の存続期間
31234
(2016年6月 9日)
2017年2月 9日 26635
(2018年3月 9日)
30年
(満了日:2048年3月 9日)
交配組み合わせ 旧系統名
296-16×332-16 モモ筑波127号

栽培適地

温暖化により冬の気温が上昇しても、安定した開花と結実が見込めることから、モモの将来にわたる安定生産に貢献すると期待されます。特に早生品種の栽培割合の高い西日本の産地を中心に普及を見込んでいます。

農林認定品種(旧:命名登録品種)

育成担当者

八重垣英明 、末貞佑子、山口正己、澤村豊、安達栄介、山根崇嘉、土師岳、内田誠、鈴木勝征

発表論文

  • Chilling Requirements and Blooming Dates of Leading Peach Cultivars and a Promising Early Maturing Peach Selection, Momo Tsukuba 127. Sawamura Y. et al. Hort. J. No.4 pp.426-436