なろりん、小さな虫の大きな問題に迫る! の巻
お天気: 晴れ
こんにちは なろりんです♪
気の向くままに全国にある農研機構の研究センターを巡って紹介しています。
79回目のなろりんリポート、略して「なろリポ」です。
今回訪れたのは、鹿児島市中山町にある「動物衛生研究部門 九州研究拠点」です。
牛のアルボウイルス感染症の研究をしている「暖地疾病防除ユニット」を訪ねたよ。
丘の上にあるよ♪
昆虫などの節足動物から脊椎動物に感染するウイルスをまとめて「アルボウイルス」というんだって。人に日本脳炎やデング熱を引き起こすウイルスもアルボウイルスの仲間だそう。 牛がこのウイルスに感染すると、流産や発熱などの原因となる病気を引き起こしてしまうことがあるのだそう。でも牛のアルボウイルスは牛から人には感染しないよ。 病気の発生によって、年間に数千万から数億円の被害を受けていると言われているよ。深刻な問題だね。
このウイルスは吸血性の昆虫によって感染することが多く、こちらのお部屋では、その中のヌカカと言う昆虫について研究をしているよ。
ヌカカは人を刺す蚊とは全く別の種類の昆虫で、蚊に比べてとても小さくて1~3mmほどの大きさなので、飛んでいてもほとんど目では見えないくらい。
ウイルスに感染している牛をヌカカが吸血すると、血液と一緒にウイルスがヌカカの中に入って、今度はヌカカに感染するんだって。次に、感染していない牛を刺すことでウイルスをうつすのだそう。そうやってどんどん感染が広がるんだって。
どこに分布していて、どの時期に活動するのかなど、ヌカカの生態を調べることで、病気が発生しやすい地域や時期を分析して、より効果的な予防法を考えることができるのだそう。
動物の血液を吸うヌカカは日本におよそ80種いて、その中のどの種類のヌカカがウイルスを広げているのか調査しているのだそう。
トラップの上にブラックライトがあるよ。光に寄ってくるヌカカの習性を利用しているのだそう。下には羽があって、これが回ると集まったヌカカをトラップの中に吸い込むんだって。
トラップには工夫がいっぱい♪
トラップの筒の中に、目の大きさがちがう網が2つ入っているよ。 まず目が大きいところを蚊とヌカカが通って、次の細かい編み目はヌカカだけが通るしくみなんだって。そうして一番下の部分を外せばヌカカだけ採取できるのだそう。なるほど。
ヌカカだけをゲット!
夏場の涼しい時期だと、一晩で数万匹もヌカカが採れるんだって!すごい数!
採取したばかりのヌカカのおなかの中には、吸った牛の血液が残っていることがあるので、ちゃんと消化されるまで、だいたい3日くらい飼育するよ。
ちゃんと消化されていないとウイルス調査をする際、ヌカカが持っているウイルスなのか、牛の血液の中にあったウイルスなのかわからなくなっちゃうからね。
ガラス瓶の中で飼育中。エサは砂糖水だよ♪
おなかの中の牛の血液の消化が終わったら、次にヌカカを種類別に数えるよ。
まずはガラス容器の中にヌカカを集めるんだって。
飛び回っているヌカカをどうやって集めるのかな?
部屋の電気を消して、箱の奥の一角を蛍光灯で照らしたよ。
ヌカカが光のところに集まっていくよ!
箱の中のヌカカが明るい方へ集まったところで、今度はガラス容器の中に吸い取るよ。
ガラス容器と吸引機をゴムのチューブでつないで、掃除機のようにヌカカをスポスポ吸い取り容器に集めるよ。
容器の中にどんどん吸い込まれていくよ
全部吸い込んだよ!これで500匹くらいいるらしい
次に、二酸化炭素をこのガラス容器の中に入れるよ。
ヌカカに二酸化炭素をたくさん吸わせると、酸素が足りなくなって気絶するんだって。
その後、シャーレに移してお薬で眠らせるよ。
ヌカカ、眠ってます
眠っているうちに、種類別に数えるよ。
小さいから顕微鏡を使って数えるよ
ヌカカは羽に模様があって、羽の模様からおおよその種類を分けることが出来るよ。
九州研究拠点あたりでは普段10数種類のヌカカが採れるんだって。
なろりんも挑戦♪
こうして種類別に分けたヌカカは、そのあと凍らせてウイルスを持っているか調査するよ。
どの種類のヌカカがどういうウイルスを持っているか、まだまだわかっていないことがたくさんあるのだそう。
こちらの九州研究拠点には昆虫の研究者の他に、牛の研究者やウイルスの研究者もいて、連携していろんな方向から総合的に研究をおこなっているよ。
牛のアルボウイルスは、熱帯・亜熱帯地域からヌカカによって運ばれてくると考えられているので、九州・沖縄地方はまさに最前線。
畜産農家の密集地帯でもあるので、この地域で継続的に監視して、日本に新たに入ってきたウイルスをいち早く見つけることがとっても重要なんだって。
ウイルスを発見した場合は、農林水産省を通じて全国にお知らせして注意を促しているのだそう。
これまで動物衛生研究部門では、日本で新たに発生したアルボウイルス感染症の原因となるウイルスを見つけ出し、そのウイルスに対する診断法やワクチンを作って普及させ、そしてまた新しいウイルスを発見して...と、ずっと繰り返してきているのだそう。
牛と畜産農家さんをアルボウイルスの感染から守るため、これからも九州での監視と調査、研究はまだまだ続くよ!
案内してくれたヌカカの研究者さんと。
ありがとうございました♪
次はどこの研究センターへいこうかな。お楽しみに♪
「動物衛生研究部門」の詳細は、ホームページを見てね。