農業機械研究部門

緊プロ開発機のご紹介

傾斜地果樹用多目的モノレール(回行式)

(2001年発表)

園内くまなく防除も運搬も楽々

  • 薬液散布は無人で可能、能率20倍で、農薬被曝ゼロ
  • これまで人手に頼った収穫物や資材の横移動も機械まかせで楽々作業

写真
薬液散布車

1.利用のメリット

無人での薬液散布が可能。収穫コンテナなどの園内運搬は楽で能率的。

2.開発機の概要

  • 斜面上下に架設した基幹モノレールに、園内にくまなく配置したいろは坂方式のレールを組合わせて、防除や運搬を行うモノレール。
  • 薬液の補給や収穫物の積替えは、双方のレールの接点で行い高能率。
  • 防除は、150Lタンクを載せた防除セットを使い、無人で園内を隅々まで作業が可能。
  • 収穫物や資材の運搬は、200kgが積める荷物台車で、楽々作業。
  • 肥料散布は、80Lのタンクを載せた施肥セットを使って無人作業。
  • 防除の作業能率は28a/時程度で、果樹園の下からホースを引きながら行う慣行手散布の約20倍。

今までのモノレールと多目的モノレール

3.活用上の留意点

  • 最大傾斜30度以下の果樹園に設置可能。
  • 等高線方向のレールの設置間隔は10m以内。

4.委託研究実施会社

株式会社ニッカリ株式会社共立

回行式軌条の配置回行式軌条の配置

薬液散布装置(手前は斜面上下方向レール)薬液散布装置(手前は斜面上下方向レール)

5.主要諸元・構造

  • 構 造
    1)軌条は等高線方向のS字軌条と上下方向の本線軌条で構成される。
    2)S字軌条では、S字軌条けん引車が薬液散布車、運搬車等の作業機をけん引し て作業を行い、薬液の補給や収穫物等の載せ換えは、本線軌条との近接点で行う。
    3)本線軌条では、本線けん引車、本線タンク車、本線運搬車が、S字軌条タン ク車への薬液補給や収穫物の本線軌条末端への運搬等を行う。
    4)薬液の補給は、本線軌条に沿って設置した配管を介して、本線軌条端部のタンクから行うことも できる。
    5)薬液散布作業及び噴頭の方向制御は無人で行うことができる。
  • 主要諸元
軌条
本線軌条 50mm×50mmの角パイプ、下面にラック付き
S字軌条 50mm×50mmの角パイプ、上下面にスリット加工
本線軌条の作業機
本線けん引車 全長:86cm、機関出力:4.4kW、ピニオンラック式駆動輪
本線タンク車 全長:207cm、タンク容量:500L、うず巻ポンプ搭載
本線運搬車 全長:208cm、積載量:200kg
S字軌条の作業機
S字軌条けん引車 全長:89cm、機関出力:2.9kW、ウレタンローラ式駆動輪×4個
薬液散布車 全長:104cm、風量:200m3/min、機関出力:5.5kW、散布量:20L/min
S字軌条タンク車 全長:140cm、タンク容量:150L
S字軌条運搬車 全長:200cm、積載量:200kg
肥料散布車 全長:114cm、タンク容量60L、機関出力2.1kW

6.作業性能

  • 薬液散布車による作業能率は散布量370L/10aのとき27a/hであり、薬液の付着は良好で、病虫害の発生はなかった。
  • 収穫箱を等高線方向に約19m運搬するときの作業能率は64箱/h・人で、手運搬の2.5倍で、作業者の労働負担も軽減された。
  • 肥料散布車により化成肥料を120kg/10a散布した時の作業能率は27a/hであった。
    (試験場所:愛媛県果樹試験場)