九州沖縄農業研究センター

スクミリンゴガイ

分布と被害

アジアおよび国内での分布

アジア地域におけるスクミリンゴガイの侵入と分布スクミリンゴガイは、1979年ごろにアルゼンチンから台湾に食用として輸入されました。その後、台湾あるいは直接南米から、アジア各地に広がりました。今では各地で稲に被害を与えており、フィリピン、タイ、ベトナムなどでは、稲のもっとも重要な加害動物とされています。 このような問題があるにもかかわらず、新たに食用あるいは除草目的などで貝を持ち込む例が後をたたず、1990年代に入ってからも91年にはラオスで、95年にはカンボジアで、それぞれこの貝の生息が確認されました。

日本では1981年に台湾から長崎県と和歌山県に貝が導入されました。導入当初はこの貝の養殖用の稚貝生産や食用のための販路もあったようで、1983年には全国で35都道府県、計500ヶ所もの養殖場ができました(平井,1989)。

ところが、野生化した貝が稲を加害し始めたため、1984年に農水省が有害動物に指定し、海外からの輸入を禁止しました。また、食用としての需要も伸びな い中で、沖縄県で採集されたこの貝から、人体にも寄生する広東住血線虫が発見され、国内での養殖業は完全に廃れました。

県別の分布でみると、スクミリンゴガイが生息している県は、1985年からあまり変化はありません。ただし、将来温暖化が進むとさらに北上する可能性があります。

国内におけるスクミリンゴガイの分布拡大 (Mochida, 1991)
国内におけるスクミリンゴガイの分布拡大
(Mochida, 1991)

水田におけるけるスクミリンゴガイの発生率:2012年
水田におけるスクミリンゴガイの発生率:2012年
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水田におけるスクミリンゴガイの発生面積の推移スクミリンゴガイの水田における発生面積は、被害の多い九州においてデータがとられていました。それによると、1985年以来、90年代半ば頃まで激増していましたが、ここ数年は微増傾向にみえます。 全国での発生面積は、1993年から統計がとられており、年々増加しています。全国の発生面積に占める九州の発生面積の割合は約6-8割です。

被害面積

スクミリンゴガイによる稲の被害面積の年次変化スクミリンゴガイによる稲の被害面積は、年々増えてきています。特に1999年からは、全国の被害が1万ヘクタール程度の高い水準が続いています。この突然の増加は、気候変動などでは説明がつかず、原因ははっきりしません。もしかすると、スクミに対する関心が高まったために、従来被害と認められていなかったようなケースも被害と認識されるようになったためかも知れません。気温が温暖であり、田植え時期が梅雨にあたるために、例年、全国の被害の大部分(9割程度)が九州に集中しています。2002年度以降、全国の被害面積データはとられていません。