[基本的な考え方]
河川や池には魚や甲殻類などスクミリンゴガイの天敵がたくさん生息しています。河川や池では農薬による防除を行うことができませんので、天敵をうまく活用することがポイントです。 卵塊から孵化した直後の孵化貝や小さな幼貝は多くの天敵により捕食されます。しかし、貝が成長して大きくなると(例えば殻高が2cm以上)貝を捕食できる天敵の種類は激減します。常に天敵が生息しているような安定的な環境では貝が大きくなる前に大部分が捕食され、貝密度は低いレベルに保たれます。
一方、一時期、天敵がいなかったり(その間に貝が成長してしまう)、水田(水田にはほとんど天敵がいません)から大きな貝が流れてくるような環境では、成熟した貝が著しく高密度になることがあります。
河川やクリークの環境を改善し、在来の生物を呼び戻しましょう。
1.河川や池に普通に生息している多くの魚や甲殻類、カメなどはスクミリンゴガイの天敵です。私たちが試験した在来または帰化した46種の生物のうち、27種がスクミリンゴガイ(孵化貝)を捕食しました。このうち、水田に普通に生息しているのは、ウマビルなどごく一部の生物だけです。
殻高/割合 | 捕食割合40%以下 | 捕食割合40~80% | 捕食割合80%以上 | ||
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殻高6mm以下 | ドンコ(42) | テナガエビ(2.4) ウスバキトンボ(0.4) コヤマトンボ(0.6) オイカワ(9.7) ムギツク(9.5) モツゴ(2.0) |
カマツカ(17) ウグイ(6.2) | ||
殻高6~20mm | ギンヤンマ(0.8) ウマビル(1.4) |
サワガニ(5.4) ゲンゴロウ(3.4) ギンブナ(400) ティラピア(584) |
アメリカザリガニ(50) カワムツ(4.7) カワアナゴ(43) アカミミガメ(136) |
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殻高20mm以上 | モクズガニ(72) イシガメ(511) スッポン(553) |
コイ(645) クサガメ(391) アイガモ(1065) ドブネズミ(304) |
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貝を捕食しなかった生物:シマイシビル、スジエビ、コオニヤンマ、オニヤンマ、タガメ、タイコウチ、ミズカマキリ、アメンボ、マツモムシ、アユ、ドジョウ、ヤマトシマドジョウ、ウナギ、ナマズ、オヤニラミ、オオクチバス、イモリ 、ヌマガエル、ウシガエル | |||||
()内は平均体重(g). トンボ類は幼虫のみ、カエル類は幼体(オタマジャクシ)と成体で試験 |
2.コイ、カメ類(スッポン、クサガメ等)、ドブネズミは、比較的大きなスクミリンゴガイも捕食する有力な天敵です。
3.コイを池などに放流すると、貝密度の著しい低減化(場合によっては絶滅する)が期待できます。しかし、未分布地ではコイもまた侵略者であることを忘れてはなりません。
4.水流が速くなるとスクミリンゴガイは生息できません(50 cm / sec以上では流されてしまう)。よどみをなくし、水流を速くすることが可能なら、貝密度を低レベルに保つことができます。