九州沖縄農業研究センター

新規野菜・花き栽培技術マニュアル

環境に負担をかけない窒素節減技術

沖縄地域でも、化学肥料、生活排水、畜産廃棄物に起因する河川や地下ダムの硝酸汚染が問題となりつつあり、対策技術の確立が求められている。ここで紹介する技術は、サトウキビ側枝苗春植え移植栽培において肥効調節型肥料(被覆尿素肥料)を利用し、窒素肥料を減肥しながら施肥労力も減らしていくことをねらいとする。

1. 肥効調節型肥料によって窒素施肥量を減らすには

  • 春植え初年度の施肥・植え付け法:肥効調節型肥料施肥区(以後LPS区)は、元肥としてN(硫安)、P2O5(苦土重焼リン)及K2O(塩化カリウム)を6, 10, 10 g/m2全層施用する。LPS区は施肥窒素量を慣行区の4割減とし、追肥作業を省略するため、シグモイド型被覆尿素160日タイプ(LPS160)6gN/m2を側枝ポット苗作成時にポットに混和する。
    2月上旬にサトウキビ(農林8号)の側枝ポット苗を作製し、3月中旬に畝幅1.4m、株間0.35mで定植して翌年1月中旬に収穫する。
  • 株出し次年度の施肥法:LPS区の施用量は元肥において春植え初年度に準ずるが、4割減の施肥窒素量LPS160の代わりにLPS120(6gN/m2)を刈り取り1ヶ月後に側条施肥する。

2. 窒素施肥をどれだけ減らせるか

LPS160,120を用いて窒素を4割減らしても、慣行区{元肥としてN(硫安)、P2O5(苦土重焼リン)、K2O(塩化カリウム)を6, 10, 10 gN/m2を全層施用。また、追肥として、2回窒素(6gN, 8gN/m2)を施用}と同等に窒素吸収は維持される(図1)。

3. サトウキビ収量および可製糖量は

側枝苗作製時に追肥分を減肥してLPS160及び120を施用した場合でも、春植え初年度、株出し次年度のサトウキビ原料茎重と可製糖量は、これまでの慣行施肥区とほとんど変わらない(表1)。

4. 施肥と側枝苗に掛かる費用は

  • 慣行施用:10a当たりの窒素施肥量は、20kgである。これを、硫安(成分量21%,625円/20kg)を用いて施用すると、価格(10a)= 20kg/0.21・625円/20kg = 2,975円となる。
  • LPS4割減肥:10a当たりの窒素施肥量は、12kgである。これを硫安による窒素6kg,LPS160(成分量40%,1980円/10kg)による窒素6kgで施用すると、価格(10a)= 6kg/0.21・625円/20kg + 6kg/0.4・1980円/10kg = 3,864円となる。なお、リン酸とカリは、両者同量であり、側枝苗の価格は、1本13.5円である

5. 複合肥料を使用する場合は

全層施肥にサトウキビ複合肥料を用いる場合は、窒素の成分量に応じて被覆尿素(LPS160,120)の施用量を調整する。

図1サトウキビ春植え移植栽培における由来窒素施用・吸収量

図1サトウキビ春植え移植栽培における由来窒素施用・吸収量

表1

宜野座村の現地栽培試験

宜野座村の現地栽培試験