九州沖縄農業研究センター

新規野菜・花き栽培技術マニュアル

緩効性肥料で施肥の効率化

1. 緩効性肥料とは

ここでは緩効性肥料あるいは肥効調節型肥料と呼ばれる被覆尿素肥料を用いる。これらの肥料は、早く溶けて速く効く尿素(速効性肥料)を樹脂膜でおおって、その溶け方を遅くしたものである。作物の生育に合わせて、ゆっくりと土に溶けて効くので、作物が肥料をほしい時期に必要なだけ与えることができる。一度にたくさん施用しても肥料やけを起こさない。また、作物の生育期間に合わせて、溶け出す長さをいろいろな長さに調節できる。溶けかたは、温度に左右され、温度が高いと早く溶けて、温度が低いと、遅く溶ける性質を持っている。

図1図2

2. 緩効性肥料のメリット

  • 施肥作業を省力化できる。
    肥料の効いている期間が長い→ 施肥回数を少なくできる【施肥回数の減】
  • 施肥量を減らせる。
    作物に利用される肥料成分の割合が高い→ 施用量を少なくしても同等の収量【減肥】
  • 環境への影響が小さい。
    作物の生育に合わせて溶け出す→ 肥料の地下への流出が少ない【環境負荷軽減】

3. 緩効性肥料を利用した夏植えサトウキビの全量元肥栽培法

  • 栽培暦
    栽培暦
  • 全量元肥栽培の夏植えサトウキビの収量
    夏植えサトウキビの収量サトウキビ
    【夏植えサトウキビの全量元肥栽培】
    緩効性肥料を利用した全量元肥栽培の夏植えサトウキビの収量と糖度は、速効性肥料を利用して追肥する従来の栽培方法とほぼ同等である。
  • 全量元肥栽培の肥料の効き方
    緩効性肥料と速効性肥料の溶け出し方の違い
    夏植えサトウキビの窒素の利用率
    緩効性肥料は生育初めの溶け方は少なく、その後、作物の生育に合わせて溶け出して、多くが作物に吸収され、収穫の頃にはほとんど土には残らない。このため、緩効性肥料を用いる全量元肥栽培は、作物の生育に合った環境にやさしい栽培法といえる。

4. 全量元肥栽培の経済性

緩効性肥料は増収効果、省力化が期待でき、環境にも優しいが、価格が高い。肥料代を試算すると、10aあたり6,000円ほど従来より高くなる。しかし、サトウキビの増収効果が10aあたり約10,000円と見込めるので、これにより肥料代をカバーできる。