九州沖縄農業研究センター

新規野菜・花き栽培技術マニュアル

嘉手納さんのバレイショ作り(現地生産例)

宜野座村の農家嘉手納さんは、本人、父親、母親、弟、弟嫁の5名が農業に従事しており、バレイショ2.5haの他、サトウキビ80a、パパイヤ20a、キャベツ15aなどの栽培、肥育牛35頭の飼育を行っている。10数年前からサトウキビに替えて商品性の高い青果用バレイショを生産し、収益性の向上に取り組んできた。バレイショの作付面積は、一時は借地も含めて7haに上ったが、青枯れ病を中心とする連作障害のため、現在は2.5ha程度に留まっており、耐病性品種の導入やサトウキビとの輪作を試みている。

1. 栽培法

  • 土つくり:国頭マージ土壌はpHが4.9と低いため、100kg/10aの苦土石灰の施用により酸度矯正を実施している。また、1.8~2トン/10 aの堆肥をバレイショ植え付け前に毎作施用している。
  • 栽植様式:以前は畦幅が65cmであったが、現在は表面排水を良くするため畦幅80~85cmで、株間は20cmの1条植えとしている。栽植密度としては10a当たり5、800~6、300株である。
  • 品種:主力品種は、暖地バレイショの代表的品種デジマであるが、その他にホッカイコガネ、レッドムーン、アイノアカ、青枯病に対して耐性のあるメイホウなどを栽培している。レッドムーンやアイノアカはメイホウよりは青枯病に弱いが、デジマに比べると被害が少ない。しかも、皮色が有色のため青果用バレイショとして差別化しやすく、現地では作付面積の拡大が期待されている。
  • 作付体系:デジマは青枯れ病に弱く、連作により減収や品質の低下を招いており、メイホウなど耐病性品種の導入やサトウキビとの輪作を進めている。
  • 施肥:植付け前に化成肥料(窒素:リン酸:カリ=10:10:10)を10a当たり140kgを全層施用し、生育状況を見て葉面散布で養分を補給している。
  • 植付:植付けは、10月上旬から11月下旬までに行う。一条の管理機で植え付けた後覆土を兼ねて培土を施し、雑草防除のため黒色のメデルシートで被覆する。出芽後の間引き(除けつ)はしない。
  • 病害虫防除:植付けと同時に虫害防止のためにオルトラン粒剤を3~6kg/10 a程度条施する。生育途中には、殺菌剤(サンドファンC水和剤、ジマンダイセン水和剤、トップジンM水和剤)と殺虫剤(アドマイヤー水和剤、オルトラン水和剤;アブラムシ対策)をブームスプレヤーで10日から2週間おきに散布する。

2. 収穫・調整

収穫は種芋植付け後100~110日を目安に行い、JAの選果場で病気にかかったものや外観品質が著しく劣るものを除き、規格別(2S、S、M、L、2L、3L)に選別する。選果場では、1日8~10トンのバレイショが選別できるので、予め収穫日を決めて、持ち込み量を調整している。

3. 出荷

収穫されたバレイショは、沖縄県内はもちろん、関東、関西の市場にも出荷されている。宜野座村には、「みらい宜野座」という名称のアンテナショップがあり、レッドムーン、アイノアカ、メイホウなど量が限られているものも宣伝も兼ねて販売している。

4. 緑肥の植え付け、耐病性品種の導入及びサトウキビとの輪作を経験して

有機物供給については、畜産から出る家畜排泄物で堆厩肥を自家生産できるのでそれほど困っていない。しかし、作付面積の拡大伴い、畑までの距離が遠くなって堆厩肥の運搬が大変な場合には緑肥の利用が大いに役立つ。耐病性品種の導入やサトウキビとの輪作による青枯病の生態的防除については、持続的にバレイショ生産を行う上で大変重要な技術と受け止めており、得られた情報を活用していきたい。

バレイショの生育状況
バレイショの生育状況

青枯病の被害を受けた地上部
青枯病の被害を受けた地上部

青枯病の被害を受けた塊茎
青枯病の被害を受けた塊茎