沖縄本島北部に分布する国頭マージ土壌は降雨によって土砂が流出しやすく、海洋汚染や地力低下の原因となっている。対策としては、作物で土壌表面を被覆すること、土壌の保水性を高めることが有効である。ここでは、セタリアグラスなどの作物で土壌表面を被覆した場合の土砂流出防止効果とそれに適した栽培条件、緑肥作物のすき込みや輪作による保水性の改善について紹介する。
1. 作物による被覆でどの程度土砂流出を妨げるか
被覆作物(例えばセタリアグラスなどの牧草、クロタラリアなどの緑肥作物)による土壌表面の被覆程度が大きいほど土砂流出量は少なく、被度100%(土壌表面が作物で完全に覆われた状態、裸地の状態は被度0%)では土砂流出はほとんど起こらない。降雨強度に応じた土砂流出防止効果は、被度14.1%であれば1時間当たり30mmの降雨に耐えられ、被度74%では40mmの降雨まで土砂流出がほとんど起こらない(図1)。海洋汚染の主因である単位容積当たり細粒赤土の量も被度が高いほど低く、流出の経過は、降雨開始20分後にその値が最大となり、その後緩やかに低下傾向をたどるのが特徴的である(図2)。
2. 土砂流出防止に対する根の役割は
緑肥作物を栽培した場合、茎葉による被覆だけでなく根の張り具合も土砂流出を抑える効果が期待できる。しかし、植え付けから2~3ヶ月程度の栽培期間では根の張りによって土砂流出量を減少させる効果は小さい(表1)。
播種量 | 土砂流出量(g/h) | 被度(%) | 地下部重(g) | |
---|---|---|---|---|
全体 | 地下部のみ | |||
裸地 | 162.3 | - | 0 | |
播種量少 | 160.9 | 168.6 | 6.1 | 0.1 |
播種量中 | 78.6 | 169.8 | 27.3 | 1.1 |
播種量多 | 71.3 | 160.0 | 54.9 | 9.0 |
3. 土砂流出防止のための被覆作物の播種条件
沖縄本島における梅雨期(5月上旬~6月中旬)の開始までに植生で土壌表面を被覆し、40mm/時間の降雨で土砂が流れないようにするには、生育の早いセタリアグラスでは2月上旬、シグナルグラスでは1月中・下旬に播種すればよい。この時期に所定の密度で播種することで、梅雨期までにはほ場表面の約70%を作物で覆うことができる(表2)。
草種 | 播種量(kg/10a) | 播種日 |
---|---|---|
セタリアグラス | 1.5 | 2月11日 |
3.0 | 2月11日 | |
4.5 | 2月13日 | |
シグナルグラス | 1.5 | 1月16日 |
3.0 | 1月25日 | |
4.5 | 1月25日 |
4. 縁肥作物の栽培によって保水性は向上するのか
一般に、土壌に有機物をすき込み、団粒構造を発達させると保水性が増し、土砂が流れにくくなる。含水比は保水性を表す物差しの一つで、その数値が大きいほど土砂は流れにくい。しかし、マージ土壌では、縁肥作物の種類や輪作が土壌の保水性に与える効果は小さく、そのすき込みで大幅に土壌の保水性を高めることは難しい。(図3、4)。
図3 緑肥の種類が保水性に与える影響
注)保水性は、pF1.7とpF4.2の含水比の差で表す。
図4 輪作体系が保水性に与える影響