1. 生育特性
カーネーションは長日植物で、温暖でやや乾燥した気候を好む。沖縄で栽培を成功させるためには、品種選定、土壌改良、仕立て方法、温度管理などを特に重視する必要がある。
カーネーションは、少し寒さにあたった後に暖かくなると順調に花を咲かせるが、全く寒さにあたらないと、茎や葉は茂ってもなかなか開花しない。沖縄の冬はカーネーションにとっては「寒い」と感じるぎりぎりの温度である。少しの低温で満足してたくさんの花を着け、しかも茎の長さや花の色などの商品性でも優れている品種は数が限られる。
2. 栽培暦
3. 品種
- スタンダード系(1本の茎に1花にするタイプ)
‘アンソニー’、‘アニー’‘モータルデ’。単価はやや低いが、わきのつぼみを取る手間が省ける。 - スプレー系(1本の茎にたくさんの花を残すタイプ)
‘ソネットブラボー’、‘エチュード’。収穫の終わりごろには花の数が減って商品率が低下するが、単価は高い。
4. 育苗
現在流通している苗のほとんどは自家増殖が禁止されているので、新しい品種は苗を購入しなければならない。9月下旬までに苗を購入する。栽培しやすいのはセル成型苗(プラグ苗)タイプ。
県外の苗にはミカンキイロアザミウマが寄生している恐れがある。導入苗は、苗が届いたらすぐに薬剤散布をし、殺虫剤を散布しながら、2重の防虫ネットを張ったハウスで1週間以上隔離栽培する必要がある。
5. 定植準備
- 畑の選定
9月上旬までに日当たりと排水がよい土地を選び、水が流れ込まないように周囲に溝掘り等を行っておく。 - 施肥
腐植を多く含み、軽く、水はけがよく、pH6.0~6.5、EC(1:5)は0.6mS/cm以下、仮比重は1に近い土壌が適する。少なくとも定植の1ヶ月前に有機物を多く入れ、充分腐らせておく。沖縄の土壌は粘土質で水や空気を通しにくいので、徹底した土作りを行う。カーションは多肥に弱い。肥料を元肥で入れると調節が難しくなるので、元肥は窒素、燐酸、カリがそれぞれ6、5、8kg/10a程度として、後はかん水を兼ねて液肥で追肥する。 - 植え付け
うねは床幅70~80cm、通路幅45cmを目安とする。3月からは芽の整理や収穫の作業が非常に多く、その時期にどれだけ作業できるかで栽培可能な面積や収益性が大きく影響されるので、作業性を優先する。
定植適期は9月中旬から10月末ごろまで。栽植密度は、定植時期によって変わるが、最終摘心時に茎葉が床面全体を覆えることが基準となる。発根しはじめの苗を9月下旬から10月中旬に定植する場合は、12.5~25株/m2実面積程度(床幅80cmのうねに条間20cmで株間20cmまたは10cmなど)が適する。これより遅く定植するときは本数を増やす。11月中旬の定植では10月の2~3倍の苗が必要。ポットで育成した大苗も利用できる。
定植時には遮光ネット等で軽く遮光し、約1週間後に取り除く。定植直後に充分潅水するが、翌日以降は潅水の回数を徐々に減らしてゆく。定植から1週間ほどしたら、土の表面が乾き始めてから潅水するようにし、根に軽い水分ストレスをかける。
6. 定植後の管理
- 追肥
潅水をかねて1000倍程度の薄い液肥(窒素濃度:約100ppm)を週に1~2回施す。 - 除草とマルチ
うね立て後は、アルミ蒸着の有孔(小さな穴あき)反射フィルムでマルチを行い、雑草の発生やカーネーションの茎の腐敗を予防し、光の有効利用を図る。 - ハウスのビニル被覆
ハウスは、冬の間も天井のビニルは張らずにおく。 - 摘心と整枝
定植から2~3週間後に摘心を行う。挿し芽やポット苗の状態で大きくなりすぎた場合は、定植時に摘心する。10月末頃までは蕾を付けず、たくさん枝分かれするように摘心を繰り返す。母枝として適するのは、株元に近く、生殖生長に偏らない若々しい茎なので、そのような枝をできるだけ多く確保する。頻繁に見回って、茎が3cm以上伸びた枝は摘心する。
10月中下旬に摘心した後、枝を横倒しにしてネットで押さえつける。倒す時には、なでつけるように株全体を一方向に寝かせると分岐部分で折れることが少なく、切り花品質が安定する。定植が遅くて倒せるほど植物が大きくなっていない場合も、ネットは張っておく。
摘心された母枝からは多数のわき芽が発生する。11月中下旬に、指でつまめるほど大きくなった芽の未展開葉をつまんで引き抜く。これが最終摘心となる(第1図)。残った茎頂部は、2、3週間後に除去する。