九州沖縄農業研究センター

新規野菜・花き栽培技術マニュアル

一斉開花と高品質化のための技術

ここでは、発蕾期以降の管理に重点を置き、3月~母の日に計画的な採花を行うための技術を紹介する。

1. 発蕾期までの管理

  • ハウスの被覆
    沖縄では日最低気温が高いので、1月中旬ごろまでハウスはビニル無被覆あるいは窓を解放しておく。雨が多い時期になると茎が腐敗しやすくなるので雨よけのビニルを張る。
  • ネット張り
    ネットは合計3段使用する。茎を押さえつけるのに使用した最下段は、母枝の回転を防ぐためにそのまま固定しておき、新たに2段を追加して、切り花となる部分を支える。株が茂ると病気が出やすくなるので、夕方には乾くように、晴れた日の午前中に潅水する。
  • 電照
    冬が暖かいと春に花が咲きにくい。しかし、電照の効果が期待できる品種もある。例えば、‘アンソニー’は1月中旬から3月末まで、深夜3.5時間電照すると開花が早まり、増収する。しかし、‘コンチェルト’など電照すると逆に減収する品種もあるので注意する。
  • 整枝
    発蕾日(つぼみが見えてきた日)を基準にして、その枝を残すかどうかを判断する。3月くらいから「母の日」まで収穫する場合、発蕾が早い枝はそのまま残す。しかし、4月15日(スプレー系では4月10日)ごろまでに発蕾していない枝は折り取る。最終的に残す枝の数は、スタンダード系品種ではネットの面積1m2あたり約150本、スプレー系では約130本とする。
    整理のために枝を折る位置は、その枝が発生している部分から25cmくらい上とする。
    生育と開花期の関係は、地域や施設、温度管理など、個別の要因が多く関係するので、一年試作を行って、そのデータを基に整枝をするとよい。

2. 発蕾後の温度に対する反応

発蕾から開花までの日数は温度によって大きく変わるので、ハウスのビニルを張って適温を保つ。昼間摂氏24~26度、夜間摂氏10~12度を境として、それより高い温度は開花を早め、低い温度は遅らせる。ハウス側面は常に開放していてよいが、特に開花を早くしたい場合は昼間摂氏27~30度を目標に開閉する。

3. 病害虫防除

3月ごろから、ダニ類が発生する。株元付近を中心に定期的に「マイトサイジンB乳剤」、「マブリック水和剤」などの殺ダニ剤を散布する。早めの散布が有効。薬に対する抵抗性がつきやすいので、同じ薬の連用は避ける。「母の日」前は特に増えやすいので注意。

4. 収穫と調整

  • 収穫
    沖縄での栽培では、わきのつぼみが少なくなり、切り花長も短くなる傾向がある。地元のメリットを生かすには、やや開花の進んだ段階で収穫するのがよい。切り取りは、茎のできるだけ低い位置で行う。このとき、周囲の蕾を持たない茎は光合成に役立っているのでなるべく残す。
  • 調整
    切った花はすぐ日陰に置く。調整場に持ち帰って下葉を取るなどの調整と規格分けをした後、水中で切り戻す。切り口の位置を揃えて、カーネーション用の切り花保存剤(「クリザール」等)につけ、一晩ほど冷蔵庫に置く。この処理が花の日持ちを大きく左右する。切り花保存剤の処理を終えた花は水を吸わせながら、出荷まで摂氏2~5度の冷蔵庫に入れる。冷蔵庫内の湿度が高くならないようにする。乾いた新聞紙を冷蔵庫に入れて、湿っぽくなれば湿度が高すぎる。カビを防ぐには家庭用の除湿器が効果的。出荷時には茎を水洗して切り戻す。

5. 収穫後の土の保護

雨による土壌の流亡を防ぐため、収穫後は植物や資材で土の表面を覆う。また、有機物を入れて次の栽培のための土の改良をする。ハウスの屋根のビニルを取り除いた後も、反射マルチやネットは支障のない間はそのまま置いておくのがよい。

6. 売り方の工夫

ここで紹介した作型は、台風シーズンの後定植して、3月から開花させ、「母の日」で切り終わるのをねらいとする。栽培期間が短いので、1株の苗からたくさんの切り花を収穫することと、卒業式シーズンや「母の日」などの単価の高い時期に開花のピークを合わせることが成功のカギになる。これまで沖縄でのカーネーション生産はほとんどなかったことから、市場の信用を得ることや、直販などで有利に販売する工夫が大切。採花日が表示できれば有利な販売が期待できる。