九州沖縄農業研究センター

新規野菜・花き栽培技術マニュアル

山川さんのイチゴ作り(現地生産例)

宜野座村の山川氏はプロジェクト開始当初から沖縄でのイチゴ栽培に強い関心をお持ちになり、平成12年から3年間現地試験として2a規模のハウスでイチゴの促成栽培を行い、平成13年からは地場スーパーに県産イチゴとして初出荷するまでに至っている。現在、沖縄でのイチゴ栽培の第1人者としてがんばっておられます。

1. 品種

‘さちのか’

2. 本圃の準備

自然分化苗は11月上旬、短日夜冷処理苗は10月上中旬定植となるので、ここから逆算してハウスの定植準備を始める。

  • 土壌消毒
    クロルピクリンのテープ封入材による消毒を行います。処理後廃ビニルで圃場全面を覆い、1週間から10日後に、耕耘してガス抜きを行う。
  • 元肥
    良く腐熟した堆肥を200~300kg/a施用。また、酸度矯正のために粒状炭酸苦土石灰を15kg/a程度施用。肥料は、成分でチッ素、リン酸、カリをそれぞれ1.0、1.5、1.0kg/aをLPコート(140日タイプ)またはロング(140日タイプ)等の緩効性被覆肥料で施用。
    収穫が始まった後は栄養診断に基づき、窒素成分で月に0.5kg/a程度を液肥で供給。
  • 畝立・マルチ
    畝間120cmでやや高めの畝を立て、エバーフロー等のかん水チューブを配管(1本/畝)した後、シルバーマルチを張る。

3. 定植

自然分化苗の定植は11月1日ころが適当である。この場合、12月中旬に頂果房が開花し、1月上中旬から収穫が始まる。短日夜冷処理苗の定植は10月上中旬が適当である。この場合、11月中下旬に開花し、年内の12月上中旬に収穫が始まる。第1次腋果房まで分化した苗を定植すると、さらに開花が早まる。

  • 植え穴あけ
    定植2、3日前に5mm程度のかん水をし、定植当日にマルチに植え穴をあける。栽植密度は条間25cm、株間23cm2条植え。
  • 定植
    各植え穴にひとつまみ程度、アブラムシ防除のための粒剤(ベストガード等)を施用してから定植。このとき鉢土の表面が見える程度の深さで植え付け。定植後ただちにホースで鉢土周りに潅水。頂果房は採苗時に残したランナーの伸長方向に着生する。そこで、通路側に果房が揃うように、ランナーの伸長方向を通路側に向けて定植する。
  • 寒冷紗張り
    活着促進とチップバーン(葉の縁の褐変現象)の発生防止のために、遮光率45%程度の寒冷紗を張る。

4. 収穫開始までの管理

  • 潅水
    定植後1週間~10日間は毎日4mm程度の潅水をして活着を促す。その後は2日に1回、厳寒期は3日に1回、春先は2日に1回の割合でかん水して果実肥大を促す。
  • ビニル張り
    11月中旬にビニルを張る。アブラムシの侵入を防止のために側窓部に寒冷紗を張る。側窓部のビニルは強風時以外は開放しておく。
  • ミツバチの導入
    開花が始まると、ハウス内に養蜂業者から借りたミツバチの巣箱を置き、ミツバチを使って交配させる。殺虫剤等の薬剤を散布する場合には前日の夜に巣箱の入口を閉じる。
  • 摘花
    1株当たり10~13花程度になるよう摘果。遅く開花した花は早めに摘花。
  • 病害虫防除
    ウドンコ病やダニ等が発生したらただちに防除(病害虫防除の項参照)。

5. 収穫開始以降の管理

  • 追肥
    1週間に1回程度葉の窒素含有量を調べる簡易な栄養診断を行い、栄養状態が悪い場合は、液肥を追肥する。
  • 摘果
    1果房当たり10~12果となるように摘果を行う。株の成り疲れを防ぎ、商品果率が高まる。
  • 摘葉、摘果房、摘芽
    頂果房の収穫が終わると、枯葉、病葉や果梗を除去する。また、ランナーを除去し、第1次腋果房を1株2芽とする。
  • 病害虫防除
    頂果房収穫終了から第1次腋果房収穫開始までに病害虫の防除を徹底(病害虫防除の項参照)。特に、ダニは初期の防除が肝心。
  • 寒冷紗張り
    春先には前述の寒冷紗を被覆して温度の上昇を防いで果実の軟化を防止する。

6. 収穫・調整

  • パック詰め
    気温の低い早朝に万遍なく着色した果実だけを収穫し、基準にしたがってパック詰めする。1パック重は330g程度、個数の目安は3Lが12個、2Lが約15個、Lが約20個、Mが約25個、Sが約33個とする。品質低下を抑えるために、パック詰め後摂氏2~5度程度の冷蔵庫に2時間以上入れる予冷処置を行う。

7. 作型の組み合わせによる収穫の平準化

短日夜冷処理だけによる収穫の波を小さくするために、自然分化苗を使う作型を組み合わせる。この結果、12月中旬から4月中旬までの4ヶ月間の収穫期間で、10a当たり約3tの収量が得られる。これは九州内産地の収量水準に匹敵する。

短日夜冷苗と自然分化苗の組合せによる収量変化
短日夜冷苗と自然分化苗の組合せによる収量変化

8. 果実の品質

果実糖度は年末年始には10度を超えるが、県外産イチゴと比較すると、糖度は若干低く、酸度は若干高い。しかし、果実硬度は県外産より高く、食感は良好である。また、果実の着色も良く県内では好まれる。