九州沖縄農業研究センター

新規野菜・花き栽培技術マニュアル

沖縄に適したハウス早熟作型

1. 新しい種なしスイカとは

ここで紹介する新しい種なしスイカは、波長30~0.8nm程度の電磁波(以下軟X線と呼ぶ)を照射した花粉を利用して普通のスイカ品種を種なしスイカにする技術である。従来の三倍体種なしスイカで障害となった採種・栽培・果実品質などの問題点がないため、有利に販売できると期待される。

普通スイカ(左)種なしスイカ(左)
普通スイカ(左)と種なしスイカ(左)

2. 栽培暦

栽培暦

3. 品種

‘富士光’、‘富士光TR’、‘朝ひかり’

4. 育苗

  • 播種
    11月下旬~2月ころ播種する。発芽適温は日中摂氏30~35度、夜間摂氏20~25度で、播種後4~5日で発芽する。発芽後は温度を低めに管理して徒長を防ぐ。
  • 接ぎ木
    台木はユウガオを用い、スイカと同時期に播種し、育苗しておく。呼び接ぎは、台木と穂木ともに根の着いたまま接ぎ木するので、活着率が高く、適期の幅が広い。断根さし接ぎは、最も効率がよい方法なので大規模栽培に向く。

5. 定植から本圃での栽培管理

  • 元肥
    施肥は緩効性肥料や有機質肥料を用いた全量元肥とし、追肥は液肥を用いる。施肥基準は10aあたり堆肥3000kg、N12kg、P2O516kg、K2O12kgを目安とする。
  • 栽植密度
    株間45~50cm、2~3本仕立てとし、10aあたりの栽植本数は660~880本。
  • 植え付け
    本葉4~5枚期の若苗を定植する。大苗は植え傷みしやすいので丁寧に植え付ける。定植後4~5日、新芽が伸長しかけた頃に摘心する。初期の側枝発生と伸長は若苗ではそろうが、大苗では側枝発生が少なく生育も劣る。灌水は生育初期から交配期まではつるぼけに注意しながら行い、交配期の2週間前から控え、土壌水分を少なめに管理する。温度管理は日中摂氏30度が目安。

6. 交配

着果節位は15~20節(2~3番果)を基準とし、草勢が十分で茎葉が大きければ2番果、草勢の弱い場合は3番果に着果させる。
交配には軟X線処理した花粉を使う。処理していない花粉による交配を防ぐためハウスに防虫ネットを張るか、または交配時期にくん煙剤を焚いて防虫する。また、子房と葯の両方を持つ両性花は、周囲の葯からの処理していない花粉が混入するので着果には用いない。

7. 花粉の軟X線照射と授粉

  • 軟X線処理
    交配する当日の朝、開花した雄花を摘み取り、そのまま軟X線照射装置(農業用軟X線発生装置、オーミック社製が市販されている)により処理する。花粉への照射線量は、800Gy(グレイ)で、照射時間は約70花で55分である。照射後すぐに人工授粉を行う。
  • 花粉の保存
    多くの花粉を準備しなくてはならない場合は、保存花粉を用いる。雄花を開花当日の午前中に採花し、軟X線照射後すぐに低温(摂氏5度)、乾燥条件で保存すると約1週間保存できる。実用的には、乾燥剤を入れたタッパーに処理済みの雄花を密閉し、冷蔵庫に入れる。
    長期間保存した花粉を使う場合は、交配時に着果促進のためにホルモン剤(フルメット液剤10ppm)を子房に塗布する。

8. 着果後の管理と収穫

  • 摘果
    各つるに1果着果させ、卵大になったら肥大および形の良いものを1株に1個残して摘果する。地ばい栽培では果実がソフトボール大になったらシートに正座させ変形を防ぐ。収穫前10~14日頃に玉直しを行い、接地している部分を横面に直し、着色を促進させる。
  • 灌水
    潅水は着果確認後、果実肥大を促進させるために適宜行い、収穫近くには水を控えて糖度の上昇を図る。温度管理は、交配前後は夜間摂氏15度、その後は日中摂氏30~35度を目安とする。
  • 収穫
    糖度計で糖度を確認して完熟果を収穫する。収穫までの積算温度は約摂氏950~1000度が目安。

9. 病害虫防除

菌核病は、多湿になると発生が多くなるので、排水を良くしハウス内が過湿になるのを避ける。スミレックス水和剤1000~2000倍、スミレックスくん煙顆粒6g/100m3、ロブラール水和剤1000倍液を散布。斑点病は、低温、多湿条件で発生しやすい。換気を良好にして、ダコニール1000倍液、ポリオキシンAL水和剤500倍液を散布。うどんこ病は、排水をよくして多湿、過繁茂をさける。モレスタン水和剤2000~4000倍液、トリフミン水和剤3000~5000倍液を散布。ハダニ類(ナミハダニ)は侵入初期の防除が重要である。ニッソランV乳剤1000倍液、サンマイトフロアブル1000~1500倍液を散布。アブラムシ類は、アドマイヤー粒剤1~2g/株、アグロスリン水和剤1000倍液、DDVP乳剤1000~2000倍液を散布。ミナミキイロアザミウマは、近紫外線除去フィルム、寒冷紗張りにし侵入を防止するとともにアドバンテージ粒剤を併用する。