国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と群馬県蚕糸技術センターは、群馬県蚕糸技術センターの隔離飼育区画において、遺伝子組換えカイコ(高染色性絹糸生産カイコ、赤色蛍光タンパク質含有絹糸生産カイコ及び緑色蛍光タンパク質含有絹糸生産カイコ)の第一種使用等(※1)による飼育実験を令和5年9月から11月まで行いました。
この度、飼育実験が終了しましたので、遺伝子組換えカイコの飼育管理とモニタリング調査結果について、別紙の通りお知らせします。
なお、収穫した繭(蛹)は実験室等に運搬した後、羽化・産卵させ、行動や特性等の調査に使用した他、冷凍により不活化しました。また、令和5年9月から12月までのモニタリング調査の結果、遺伝子組換えカイコとクワコとの交雑個体は見つからなかったことをお知らせします。
※1 : 第一種使用等:「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(平成15年法律第97号)に基づいた開放系(本実験では隔離飼育区画)での使用
参考 : 飼育実験計画書及び遺伝子組換えカイコの飼育の様子を掲載するウェブページ
別紙 令和5年度 遺伝子組換えカイコの飼育管理とモニタリング調査結果(群馬県蚕糸技術センター隔離飼育区での画飼育分)
飼育した遺伝子組換えカイコ
- ○ 高染色性絹糸生産カイコ(改変Fibroin H、Bombyx mori)
- ○ 赤色蛍光タンパク質含有絹糸生産カイコ(HC-F90、Bombyx mori)
- ○ 緑色蛍光タンパク質含有絹糸生産カイコ(HC-mAG、Bombyx mori)
飼育管理
- ○ 掃き立て※(飼育開始) : 令和5年9月5日(火曜日)
- ○ 上蔟 : 令和5年9月30日(土曜日)
- ○ 収繭 : 令和5年10月10日(火曜日)
- ○ 交雑防止措置
- 遺伝子組換えカイコは、成虫が生じる前の繭の段階で収穫し、実験室等に運搬しました。
- プレハブ蚕室の開閉可能な窓、戸及び換気口と、パイプハウス蚕室の内側全体に網を張って、クワコ成虫の侵入を防止しました。
- ○ 収穫後の処理・作業
- 収穫した繭(蛹)は、蓋を固定すること等により繭がこぼれ落ちない構造の容器に入れ、不活化のための施設または調査のための実験室等に運搬しました。
- 産卵調査等に係る交配試験に用いる原種の繭(蛹)は羽化・産卵させ、行動や特性等の調査に使用しました。それ以外の繭(蛹)は冷凍して不活化しました。
- 飼育終了後に残るクワの枝等の残渣は、蚕室内で遺伝子組換えカイコを取り除き、隔離飼育区画内の残渣処理室に運搬し、網をかけて30日間以上保管する(令和5年10月2日(月曜日)～令和5年11月8日(水曜日))ことにより不活化しました。
※ : 掃き立て:ふ化してすぐの幼虫(毛蚕(けご))を蚕座に移し、餌を与える
モニタリング調査結果
- ○ モニタリング用トラップ配置期間 : 令和5年9月5日(火曜日)～12月20日(水曜日)
- ○ 隔離飼育区画の四隅の外側に、合成した性フェロモン(ボンビコール)を誘引源として粘着板で捕獲するフェロモントラップを設置し、クワコ雄成虫を捕獲しました。
- ○ 調査結果
- モニタリング用トラップ配置期間中にクワコ雄成虫132頭を捕獲しました。
- 捕獲したクワコ雄成虫のうち、複眼で緑色蛍光を発現していた個体は0頭でした。
- PCR法によって各遺伝子組換えカイコの導入遺伝子の有無を確認したところ、検出された個体は0頭で、遺伝子組換えカイコとクワコの交雑は認められませんでした。
- ○ なお、令和5年度の飼育実験に係るモニタリング調査は、令和6年6月中旬から12月中旬まで実施して終了することになります。