果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

3.防風ネットの潮風害・強風害に対する設置基準について知りたい

1) 防風ネットの設置基準

今回(1991年)の台風19号のような50m/sを超える最大瞬間風速の発生確率は少ない。設置基準としては、通常、再現期間10年の最大瞬間風速に耐えるものを基本とする。強風常襲地域以外では、少なくとも最大瞬間風速30m/sに耐えられるようにする。設置予定地点近傍の最大瞬間風速や日最大風速の観測値がなくても、地形因子の解析から再現期間年最大風速が推定できる。

2) 防風ネットの設計

設計に当たっては、基準となる風速に地形係数(現地の基準風速に対する各現場の風速の比)と経験定数(期間係数または季節係数と呼び、年最大風速に対する防風施設の設定対象期間の最大風速の比)を掛け、更に安全係数を掛ける。対象となる基準風向に直角に設置できればよいが、地形・道路・水路・耕作の便・経費・既存林などの条件を総合的に判断する。

3) 防風ネットの減風効果

ネットによる減風効果の程度は風に対するネットの抵抗(密閉度)に左右されるが、密閉度を余り大きくしても減風効果の範囲が小さくなるので、理想的な密閉度は60~70%である。また、ネットによる減風効果は風下側でネットの高さの10倍程度までみられるので、地上高 5~6m程度が一般的である。

4) 防風ネットの構造

防風施設の構造の決定には、主柱・支柱・張線・アンカ-などのハ-ドの部分の選定とネットの選定(密閉度・糸の太さなど)が必要である。構造強度については、先に求めた基準風速をもとに計算を行う。

ネットの構造については、1本の主柱をもつ垂直の垣根状のものが多いが、その他に破風効果が大きい2本の主柱をA型に組み合わせたA型フレ-ム支柱ネット防風垣が考案されている。A型防風ネットは基準風速を42m/sとし、コンクリ-ト基礎上にL型鋼を高さ3mに77度で傾けて頂角26度でA型のフレ-ムを作り、その上に 6mm目のネット資材(1枚の密閉度30%)を二重張りしたものである。風がネットを2度通過し、ネット2枚で実質の密閉度60%と減風効果が高い(III.リンゴQ2参照)。

5) 防風ネットの設置位置

台風を想定すると主風向は南~南西方向になるので、防風ネットの設置は園の南側か南西側に設置する。さらに主風向に直角な方向にも設置し、風向変化に対応することが望ましい。ネットの切れ目とか端には袖のネットを付けると効果がある。
基本的には風が強まる部分に設置し、独立峰では頂上を頂点として放射線状に小尾根部に、山が連なるところでは鞍部と尾根筋に、特に鞍部はそれを越える位置に、斜面に平行な風に対しては等高線に直角に、吹き上げ・吹き下ろし風とともに台地の上端に設置するのが望ましい。平坦な果樹園における防風施設の間隔は、施設の高さの10倍ごとが標準であるが、傾斜地では更に間隔を狭める必要がある。急傾斜地の場合2列目の防風施設は、1列目の施設高を傾斜方向に水平に延長した線より少し低い位置にするのが望ましい。

6) 潮風害と風害防止対策

防風施設により空気中の海塩微粒子を捕捉し、潮風害を防止できる。特に防風林は塩分粒子を捕捉し、ろ過する効果が高い。防風施設による潮風害の防止効果は、強風害の防止効果と基本的には同様であり、効果範囲も同程度とされる。また、防風施設の効果は、風速の緩和よりも塩分の減少に対して大きい。
ネットの場合は防風樹に比べ除塩機能は小さいが、ネットの枚数が多いほど除塩効果は高くなる。

7) 維持管理

人工の防風施設(防風ネット)の場合、ネットは不使用時には可能な限り取り外して収納しておく。ネットの取付部分には力がかかるので、適正な取付金具を使用し、支柱とネットが接触する部分が錆びたり、表面が滑らかでない場合はネットが破れやすいので注意する。支柱の基部は錆びたり腐食したりしやすいので、防錆・防腐処理を行うことが必要である。