果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

11.改植の問題点、特に品種および改植方法などについて教えてほしい

褐変・枯死した葉や果実が枝に着いている状態の被害が著しい樹では、翌年以降の回復が難しく、枯死する可能性が高いので改植する必要がある。また、枯れないまでも被害が大きく回復に年月を要する樹については、積極的に優良品種への改植を進めることが望ましい。改植に当たっては、土壌理化学性の改善、忌地現象の回避、排水対策などに留意する必要がある。植え穴を掘る場合には、掘り上げた土壌から残根をできるだけ取り除き、土壌改良資材(堆肥、石灰、熔リンなど)を混和する。施用量は植え穴の大きさにもよるが、苦土石灰2Kg、熔リン500g、堆肥10Kg程度を目安に適宜加減する。排水不良の重粘土壌では、植え穴の湿害を防止する意味で暗渠の埋設や高畝の設置が望ましい。高畝栽培は果実の糖度向上効果が期待できることから近年各地で普及しており、併せて、園内道、排水溝、潅がい設備などの整備も行って、この機会に高品質果実生産園に改造したい。定植後の幼木は、支柱への誘引や敷き藁の実施、除草および施肥管理、防除などの徹底で、樹冠と根域の拡大に努める。

品種の選択に当たっては、産地振興も考慮して地域の立地条件に適した品種を選ぶ必要があり、普及指導機関などと相談していただきたい。カンキツの潮害に対する抵抗性は、樹勢、樹齢などによって異なるが、過去の調査や1991年の台風17、19号の被害状況を併せて総合的に判断すると、ネ-ブルオレンジをはじめとするオレンジ類・ナツダイダイが最も弱く、ハッサク・ブンタン類がそれに次ぎ、イヨカン・キンカンなどはやや強く、ウンシュウミカンが最も強いと考えられる。潮風害抵抗性の品種間差異については、緊急調査研究で調査した結果を「カンキツの潮風害抵抗性の品種間差異」として別途記載したので参照されたい。

台風被害が発生した場合には、優良品種、系統の苗木を早急に手配する必要がある。最近は、定植時の植え傷み防止や未収期間の短縮を考慮した大苗育苗が行われており、入手可能ならこれを用いるのが望ましい。なお、防風垣が枯れたり倒伏した園地では、防風樹の苗木も早めに手配する。

(2022年12月 再確認)