果樹茶業研究部門

果樹の災害対策集

13.落葉が著しい樹で樹上に果実が残っている場合、この果実を摘果すべきか否か

この問題について既存の調査報告・資料などをもとに適当と考えられる方策を、「果樹の風害・潮害対策の手引き」のI.3.台風の事後対策(2)の(ウ)と(エ)に記載した。しかし、一方では、9月中旬以降に被害を受けてほぼ全落葉した場合に、摘果した方が翌年の生存率が高かったとの成績もみられる。

9月から10月にかけての潮風害による落葉樹では、樹上に残っている果実を摘果して秋芽を早く発生させることによって少しでも樹勢の回復を図るべきか、無摘果でおいて細枝の枯れ込みおよび秋芽発生による養分消耗をできるだけ軽減するか、判断に迷うところである。これらの長短を総合的に判断して摘果の是非を判断するには、台風という突発的な事象で被害時期も限定されているため、根拠となる報告事例が少なすぎる。そこで、平成3年度緊急調査研究の一環として事後対策(摘果処理)の追跡調査を行っており、その結果を、「カンキツの潮風害による落葉樹の果実処理が樹勢回復及び着花(花)などに及ぼす影響」として別途記載したので参照されたい。

前記の調査結果では、摘果樹の方が無摘果樹に比べて貯蔵養分の集積、細根の呼吸活性、翌年の新梢(春枝)発生等の面で、樹勢回復が良好であるという結論が得られている。また、1991年の台風による被害産地のその後の回復状況をみても、ほぼ同様な傾向が観察されている。従って、9~10月の落葉被害樹についても、他の時期と同様に残存果は摘除した方が、事後対策として適当であるといえる。

(2022年12月 再確認)