東北農業研究センター

お米のよくある質問集

米作りの質問一覧へ

なぜ、イネは水に浸っていても生長できるのですか?なぜ、他の植物と違って、水に浸っていても根腐れしないのですか?

植物の根が水に浸ると腐ってしまう理由として、水中には酸素が少ないため根が酸素欠乏になること、水田など水を多く含みかつ酸素の少ない土壌では二価鉄イオンや硫化水素や毒性のある物質が生じやすく、それに根が侵されてしまうのです。

イネは茎葉から根への通気組織がよく発達しており、大気中の酸素が植物体内を通して根へと送られやすいため、根が酸素欠乏になりにくい性質を持っています。また、イネは根から酸素を分泌することや根の周辺を酸化的にする性質を持つことが知られていて、この性質により水田ではイネの根の周辺で有害な二価鉄イオンが酸化されて毒性の小さい酸化鉄を生じ、これが根の表面に被膜を作って毒性物質から根を守る役割を果たすと考えられています(田んぼに生えている健全なイネを引っこ抜いて根を洗ってみると、赤褐色をした酸化鉄がくっついていることがすぐわかります)。

このようなことから、イネは水中や水田でも根を腐らせにくく、生長できるのです。

しかし、イネの根もやはり多くの酸素がある方を好みます。水田にずっと水を深くためておくと、イネも根が酸欠となり、不健全になってしまう可能性があります。

そのため稲作農家では、イネの根の発生や伸長が著しい時期になると水田の水をいったん完全に落として乾かし、根に十分の酸素をおくるようにしたり、その後は2~3日おきに水をためたり落としたりして、生育に必要な水分を供給しつつ土中に酸素を供給して根を健全に保つようにと、工夫された栽培管理方法を行っています。