現在、日本でもっとも一般的な方法は、代かきをした田んぼに、ビニールハウスや苗代 (苗を育てるための田) などで育てたイネの苗を植え付ける方法で、「移植栽培」と呼ばれています。しかし、田んぼの面積が大きくなるにつれ、必要な苗の量も多くなるため苗を育てるのに手間や施設、費用がかかります。また、移植作業 (田植え) にも時間がかかり、移植に適した時期に作業を終えるのが難しくなります。そこで、苗を育てたり移植する手間や費用をはぶくため、最近では田んぼに直接種もみをまいてイネを育てる方法が広がってきました。この方法は「直播栽培」と呼ばれ、アメリカやオーストラリア、東南アジアの一部の地域などで取り組まれてきた方法です。
日本で行われている「直播栽培」には、水をはった田んぼに種もみをまく「湛水直播栽培」と、乾いた田んぼに種もみをまき、後から水をはる「乾田直播栽培」があります。どちらの栽培でも苗を育てたり移植する作業が不要になる分、作業にかかる時間や費用を減らすことができます。栽培中にイネが倒れて収穫量の低下につながらないよう、栽培する品種には倒れにくい特性をもつものを選ぶことが大切です。

湛水直播栽培
湛水直播栽培では、田んぼを耕してから水をはり、移植栽培と同じように代かきをします。白かきをした田んぼに、専用の機械や無人ヘリコプターなどを使って直接種もみをまきますが、土の表面に落ちたままの種もみは、鳥に食べられたり、苗がしっかり根付かず倒れたりするおそれがあります。逆に、種もみが土の中にもぐりすぎてしまうと、酸素が不足し芽が出にくくなってしまいます。
こうした問題がおこらないよう、湛水直播栽培で使う種もみにはあらかじめ鉄紛やカルパー (酸素発生剤) などをコーティングします。鉄粉をコーティングした場合は、種もみが土の表面に落ちても鳥に食べられることはなくなりますし、鉄の重みで種もみが浮く心配もありません。また、カルパーをコーティングした場合は、種もみが土のなかにもぐっても酸素不足にならずにすみます。ただし、コーティング作業にも時間や費用がかかるため、しろかきをしながら土の浅いところに種もみをまくことで、コーティングを不要にした方法も開発されています。
乾田直播栽培
乾田直播栽培では、乾いた状態の田んぼに直接種もみをまきます。代かきをせずに乾いた田んぼを耕してそのまま種もみをまく方法や、早い時期に代かきをしてから田んぼを乾かし、地面に溝を切りながらその中に種もみをまく方法があります。いずれの方法でも、芽が出てある程度まで苗が育ってから田んぼに水をはります。大きな面積で直播栽培をするのに適した栽培方法ですが、種もみをまくときに地面が乾いている必要があるので、積雪が多く春先に乾きにくい地域などには向きません。