開催日時
2023年11月15日 (水曜日) 13時00分~17時20分
開催場所
盛岡駅前会議場「マリオス」18階180-181会議室 (オンライン併用のハイブリッド開催)
参加登録者数
453名(うちオンサイトは60名)
(内訳:行政機関117名、民間企業71名、生産者・生産者団体38名、大学・教育機関等15名、公設試46名、一般37名、その他28名、国立研究機関101名(うち農研機構97名))
開催概要
有機農業は生物の多様性や農業生態系の健全性を保ちつつ、昨今の化学肥料の高騰にも対処し得る環境保全型低コスト農法として期待されています。わが国の施策としても「みどりの食料システム戦略」として取り組み面積の拡大を目指していますが、これを実現するためには、耕地面積の多い水田の有機農業を拡大する戦略が重要です。
技術革新に関する戦略の一環として、農研機構では農林水産省の研究開発事業「戦略的スマート農業技術等の開発・改良(戦略的スマ農プロジェクト)」において、令和4年度から水田有機農業において特に労働力を要する除草の作業時間削減や、有機質資材の効率的な施用に関する技術開発などを行っています。さらに、水田有機農業を持続的に成長させるためには、生産現場における技術革新だけではなく、生産者の経営向上につながる流通革新や社会制度など、多岐にわたる改革が必要と考えられます。
本シンポジウムでは、水田有機農業に関する施策、上記プロジェクトを含む農業技術開発、国際動向、流通システムの例について紹介するとともに、生産者からの意見・要望を聴取し、水田有機農業の成長に向けて必要な方策について、実証生産者を含めたパネルディスカッションを行って議論を深めました。
川口 東北研所長の開会挨拶では、今夏の猛暑の記憶も新しく、地球規模の環境変動への対応を視野に入れ、有機農業を実践する(しようとする)生産者の立場に立ったシンポジウムとすること、農業・食品産業に関わる各セクターが有機農業を成長させる取組みを拡大できるような議論を展開して欲しいと提案しました。
次に国立 水田輪作グループ長の「シンポジウムの趣旨」では令和4年から3年計画で実施中の研究プロジェクト課題「戦略的スマ農プロ:水田有機農業」の推進状況も含めて説明しました。
基調講演「有機農業と農業技術」は農研機構本部 兼 九沖研の三浦 みどり戦略・スマート農業コーディネーターが、有機農業に必要な農業技術の開発経緯と現状について網羅的に紹介しました。
次に、以下の5つの分野から6つの講演があり、質疑応答を行いました。
【政策】農林水産省 松本農業環境対策課長「みどりの食料システム戦略の実現と有機農業の拡大に向けて」
【生産現場】大潟村役場 松橋農業アドバイザー「水田有機農業の先進事例」
【農業技術】農機研 重松上級研究員「両正条田植機の開発」(動画を交えて紹介)
九沖研 古賀主席研究員「有機質資材の窒素肥効を見える化する無料アプリ」(webアプリのデモを交えて紹介)
【国際動向】茨城大学 小松﨑教授「有機米の国際的な研究開発動向」
【流通システム】やさいバス株式会社/株式会社エムスクエア・ラボ 加藤代表取締役「有機農産物の新たな流通システム」
パネルディスカッション「水田有機農業の取組み拡大のために」は、ファシリテーター:東北ハイテク研 齋藤農林水産省産官連携支援コーディネーターのリードにより、7名のパネリスト~講演者3名(三浦コーディネーター、加藤代表取締役、松本農業環境対策課長)および大潟村自然農法研究会 白戸会長、黒澤ライスサービス 黒澤代表、七島農産 七島取締役、東北研 笹原水田輪作グループ長補佐~の参加を得て議論しました。
水田有機農業の取組みを拡大していくため、主に生産者の目線から3つのテーマ「I.技術」「II.販路」「III.周囲の理解と支援制度」について、参加者からのコメントを含め、議論を進めました。
「I.技術」については、水田有機農業では除草の省力化が大きな課題となるが、対応技術は生産圃場や地域(気候)ごとに効果も異なりカスタマイズが必要であることが再認識され、「II.販路」では、播種前契約を可能とするため個々の生産者や地域ぐるみの工夫が必要であること、「III.周囲の理解と支援制度」では、農水省では現場の事例調査を踏まえ支援施策に活かすこと、また、長期的に有機農産物を評価する風土を育てるため、食育などの取組も重要とされました。
最後に九沖研 若生研究推進部長の閉会挨拶では、シンポジウムの講演・議論を踏まえ農研機構では引き続き、有機農業ニーズに対応した農業技術開発を進めることを宣言して閉会しました。
<アンケート結果>
149名から回答された事後アンケートでは、136名(91%)から全体評価を「満足」「やや満足」(5段階評価の上位2段階)と評定して頂きました。特に講演が多岐にわたっていたことが高く評価されました。さらに、やさいバスの取組み、開発中の有機質資材のアプリ、両正条田植機が高く評価され、パネルディスカッションでは生産者の本音のお話が高評価でした。
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