クリ「ぽろたん」の安定生産に効果的な受粉樹の植栽方法

要約

クリは受粉樹からの距離が近いほど収量性が高く、隣接する列の品種の花粉により結実する果実の割合が極めて高い。「ぽろたん」の植栽列に、「ぽろすけ」、「利平ぐり」、「美玖里」等の品種を受粉樹として隣接させて植栽することで安定した結実が期待できる。

  • キーワード:植栽間隔、自家不和合性、親子解析、ぽろたん、ぽろすけ
  • 担当:果樹茶業研究部門・品種育成研究領域・ナシ・クリ育種ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6461
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

クリは自家不和合性を示すことから、結実のために他品種による受粉が必要であり、栽培上受粉樹の混植が必要である。近年、渋皮がむきやすい品種「ぽろたん」と「ぽろすけ」が育成され、両品種の栽培において渋皮が剥きやすい果実を安定的に収穫するためには、これら2品種のみを混植するか、渋皮が剥きにくい品種が混入しないように、果実の外観が異なる品種や収穫時期が異なる品種を受粉樹として利用することが望ましい(2011年普及成果情報:クリ「ぽろたん」の受粉樹には「美玖里」、「石鎚」、「岸根」、「利平ぐり」が適する)。現状「ぽろたん」を新規に植栽した圃場の受粉樹の混植割合は1/4~1/8、植栽間隔は5~7m程度に設計されていることが多いが、その根拠となる知見は乏しく、最適な受粉樹の植栽方法の指標を示すことが望まれている。本研究は、近年開発されたDNAマーカーを利用したクリ果実(種子)の花粉親の推定技術を用いて、園地における受粉の実際を明らかにし、園地の受粉樹の最適な植栽方法を推定することを目的とした。

成果の内容・特徴

  • クリ果実からDNAを抽出し、DNAマーカー(2011年研究成果情報:クリの新規 SSR マーカーの開発と遺伝資源の品種判別)で48の栽培品種との親子鑑定を行うことで、花粉親を推定することができる。本技術を用いることにより、園地における受粉の実際を明らかにすることができる。
  • 「利平ぐり」は「ぽろたん」とは果実の外観の違いが顕著であり、雄花の開花期間が「ぽろたん」の雌花の開花期間と同時期である。これを「ぽろたん」の受粉樹として用いた場合、受粉樹からの植栽距離が近いほど、受粉樹の花粉で結実する果実の割合が上がり、収量が多くなる(図1)。
  • 「ぽろたん」を数品種と隣接させて植栽した現地圃場において、隣接する列の樹の花粉で結実する果実の割合は非常に高い(33~71%、図2)。
  • 2.3.よりおよび既報の研究成果(2011年普及成果情報:クリ「ぽろたん」の受粉樹には「美玖里」、「石鎚」、「岸根」、「利平ぐり」が適する)より、異なる品種を隣接する列に植えることで、クリの安定した結実が期待できる。例えば、「ぽろたん」と「ぽろすけ」の易渋皮剥皮性の2品種でクリ園を経営する場合、果実重や収量性のより優れる「ぽろたん」2列に対して、「ぽろすけ」を1列植栽することで、収益を最大化させることが期待できる(図3)。両品種は兄弟品種であるが、交雑和合であり、互いに雄花開花期間が雌花の受粉適期と十分重複するため、「ぽろすけ」は「ぽろたん」の受粉樹として適する(2016年普及成果情報: 渋皮が簡単に剥ける早生のニホングリ新品種「ぽろすけ」)

普及のための参考情報

  • 普及対象:クリ生産者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国のクリ産地で植栽の指標として導入できる。特に「ぽろたん」を栽培している地域での普及が期待される。
  • その他:

具体的データ

図1 受粉樹からの距離と果実の推定花粉親および収量の関係,図2 5つの異なる品種が列間3.5mでジョイント仕立てされている現地圃場(宮城県内)における、「ぽろたん」果実の花粉親解析,図3 「ぽろたん」と「ぽろすけ」の2品種でクリ園を経営する場合の植栽方法の例

その他

本研究は、農林水産省の食料生産地域再生のための先端技術展開事業「被災地の早期復興に資する果樹生産・利用技術の実証研究」により行われた。

  • 予算区分:交付金、委託プロ(先端プロ)
  • 研究期間:2012~2019年度
  • 研究担当者:西尾聡悟、髙田教臣、寺上伸吾、加藤秀憲、井上博道、竹内由季恵、齋藤寿広
  • 発表論文等: